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2009/04/26

グラン・トリノ

Gt_4 おやすみなさい、ハリー

多すぎるのでもなく足りないのでもなく。必要なものが必要な長さで必要な場所に。あらゆるシーンが必然で、ひとつの無駄もなく。なのにそぎ落とされているわけでもなく、豊穣なユーモアや感動がある。

たしかに、父親ってそうだった。いつも車をピカピカに洗車していて、いつの間にか何でも修理してしまっていて。一人で外を見ながらタバコを吸っていて。教えてもらうことは、たしかに道具の使い方だった。道具をちゃんと扱えて、自分の面倒が自分で見られるようになって、一人前になる。

道具は自分の力を増幅する。車も工具も、そして銃も。男の子はいつも道具に憧れて、扱い方を学んで、手にした力の制御を覚えて、成長して男になる。ウォルトがタオに道具を買いそろえてあげるシーンは、まさに父親の、不器用な男の愛情表現そのものだ。

いま世の中にある道具。パソコン、携帯電話、それらの多くは道具ではなくスキル。それらは物理的には外界に対してなんの作用も及ぼさない。実体のない力を身につけていくだけだから、いずれ男も実体を無くしていくことになるんだろう。

昔ながらの男であるウォルトは、自らの力のみを頼りに生きてきた。力を身につけ維持するために、強く自らを律してきた。そんな生き方に対する自信と誇り。それはやがて傲慢につながり不寛容となり、頑固は頑迷になり、自らを氷の中に閉ざすことになる。

そんな愚かな男の氷を溶かすのは、やっぱり女性なんだ。柔軟で柔らかくて、弱いようなのにいつの間にか包んでいる。この映画の中でも、多くの素敵な女性達が、ウォルトを包んで溶かしていった。

そしてウォルトは、戦い続けたウォルトは、疲れていることに気がついたんだね。今まで多くの大切な人を守ってきたように、今回も大切な人を守りたい。でも、もう、イヤだったんだね。大切な人に、生涯続く悪夢を背負わせること。なにより自分が、たとえもう大切な人に会えなくなっても、もう、背負いたくなかったんだね。

子どものころからずっと、戦う彼を観てきた。世界一強力な拳銃を操り、自分のみを頼りに、ぶれることなく生きる彼を観てきた。いつか、あんなかっこいい大人になりたかったな。

おやすみなさい。
ありがとう。

#216

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「グラン・トリノ」を観てきました〜♪ 妻に先立たれ、息子や息子の嫁、孫に悪態をつくウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、自分の世界だけで生きている頑固ジジイだった。或る日、ウォルトが大事にしている愛車グラン・トリノを隣人のタオ(ビー・ヴァン)が盗みに入る・・・ 人気Blogランキング      ↑ 押せば、ご近所と仲良くできるかも!? Blog人気ランキングに参加してます。 ご訪問の際は、是非ポチっとワンクリックお願いします〜♪ ... [続きを読む]

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