パッセンジャーズ
自分で、気がつかなくてはいけない
「衝撃の結末」ものである。
この手の映画は結末ばかりに目が行ってしまうが、最後のオチが上手く決まるかどうかは、そこに至るまでの異常な展開と、孤立した主人公が落ち込む危機とによるサスペンスをいかに盛り上げられるかにかかっている。常識では解釈できないような物語が、一瞬の視点変更ですっきりと別解釈される。この一瞬のカタルシスこそが持ち味なのだ。
その点、この映画の物語は冴えない。確かに怪しい事件はおこるものの、十分普通の人間に引き起こせるような事態だ。また巻き込まれる主人公の孤立感も薄く、主人公の危機がほとんど感じられないのも難点だ(ある意味主人公が複数であるという構造上の問題もあるが)。どんでん返しに至るまでのサスペンスが非常に弱く、オチにたどり着く前の映画の勢いがない。
加速できていない分だけオチの衝撃も弱い。また、このオチであれば迷いが浄化される課程に感動を織り込むこともできるはずなのに、そのあたりもあまり感じられない。なぜ彼らが迷ったかも明確ではない。本来は迷いを解消する役割を果たすべき「導き手」も、各人と「導き手」との関係がしっかりと描かれていないので、唐突感が目立ってしまう。「あれはそういえば叔母さんだ」「あれはおじいちゃんだったよ」では「ああ、そうでしたか」でおわりである。
「たくさんひっくり返す」。これがこの映画の基本アイディアなのだろうけれども、アイディアだけではどうにもならない。ちゃんと肉付けして、丁寧に伏線なりエピソードなりを積み重ねて。ちゃんと重みがあるものをひっくり返すから驚きも感動もあるのだ。オセロじゃないんだから、たくさんひっくり返してもだめです。
#207
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