ジェネラル・ルージュの凱旋
孤立無援
深紅の将軍、最後の出撃
前作「チーム・バチスタの栄光」から一年。まだ2作目ではあるけれど、シリーズものとしてビックリするくらい安定している。前半は竹内結子がボケまくり、中盤から阿部寛が一気にかき回す。そして物語の鍵となる、エキセントリックなスーパー・ドクター。早くも定番として、安心して楽しめる領域に達している。
「バチスタ」の原作を読んでみると、推理小説としては事件の起こる必然性や動機がしっくりこないし、サスペンスとしてもそれほど盛り上がらない。そんな中途半端な内容ながらも、個性的なキャラクターと、病院内部の権力闘争や医療現場の抱える問題などの興味深さ・面白さで読ませてしまう。「ジェネラル」は未読だけれども、多分同じなのだろう。本作でも殺人事件が起こるけれど、はっきりいってどうでもいい事件だ。というより観終わった頃には殺人事件があったことを忘れてしまうかも知れない。
だから映画では、殺人事件には重きを置いていない。個性的な俳優に個性的な役柄をあて、病院内の歪みを中心に物語を組み立てる。原作の良いところを伸ばし、悪いところを切りつめる。サスペンスでもミステリーでもなくなっているかもしれないけれど、でも面白い映画になっている。
そして、誰もが関心がありながらも、実際にはほとんど目を向けることがない、医療の矛盾や限界をわかりやすく提示しているところが素晴らしい。これは完全に原作者の功績なのだろう。
文字通り命を「掴み寄せる」能力を持つ者。すさまじい重圧の中、命を「仕分ける」者。そんな彼らが不眠不休で働いても、それでも絶対になくならない限界点。さらにはそんな彼らに報いることのできないシステム。命を救うためのシステムなのに、システムを生き残らせるために命を切り捨てている。
いっそのこと、もう殺人事件はなくてもいいのではないかな。ミステリーの枠から出ていった方が、もっと自由に、命について描いていけるのではないかな。映画も、小説も。
#206
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