少年メリケンサック
ハードロックもメタルも
パンクも死んだ
のっけから宮崎あおいとユースケ・サンタマリアの妙にハイテンションでけれん味の強い演技に引いてしまうが、これに慣れないとこの先には行けない。出演者のほぼ全員がこんな感じの映画である。
出演者の演技や台詞回しは、慣れてしまいさえすればなかなか楽しい。ロックのいい加減さ、だらしなさがよく出ていたと思う。バンドのメンバーも、押しの佐藤浩市、引きの三宅弘城、色物田口トモロヲとバランスが取れていた。惜しむらくは木村祐一がやや弱い。見た目の個性はともかくとして、物語の一つの核である兄弟げんかを描くにあたって、佐藤浩市に拮抗できるだけのものが感じられなかった。
部分部分で見ると結構おもしろかったけれど、全体としてみると今ひとつ物語が盛り上がらなかった印象が残る。ロードムービー的な本作において、「到達点」が見えにくいのがその原因かも知れない。兄弟の父親やアキオの息子など、物語としてふくらましきれていない行き止まりのような部分も多い。
彼らがライブを重ねていくうちに、取り戻したもの、取り戻せなかったものは何なのか。彼らの生き様である「パンク」とは何なのか。このあたりがしっかり提示できていないため、物語が締まらないのである。「パンク」=「乱暴者」ではないだろう。そもそもパンクバンドの物語が、お膳立てされたテレビ番組におとなしく出演するクライマックスを迎えてはいけないはず。これではやっぱりパンクは死んでいたとしか思えない。
それでも、最近のヒット作はコミックやテレビドラマ原作のものばかりという日本映画において、オリジナル脚本でここまでやったのは立派です。
#203
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