007/慰めの報酬
どこへ行く…
前作「カジノ・ロワイヤル」は、もはやかってのシリーズでは無いけれど、映画としてはおもしろかった。もう戻らないことはわかったけれど、納得できた。本作も路線としては前作の延長だ。ハードな映像、ハードなボンド。でも本作のハードはどこかが違う。ハードではあるけれど、整理され磨かれすぎている。映像が整ってきれいすぎている。前作はまったく新しいボンド像を見せたけれど、本作はそれを「頭で」なぞったような印象だ。
最近のアクションシーンの流行は、クローズアップ+手持ちカメラ。これを短いカットでつないでスピード感を出す。なにをやっているのかわかりにくいので個人的には好きではないけれど、流行だからしかたない。でも本作はあまりにカットが短く早過ぎる。シーン自体の長さも短いので、どんどん進んであっというまに終わっている。本作のこの傾向はアクションシーンだけではない。結果としてこの映画は、まるで絵コンテのようにダイジェスト感一杯だ。
ハード風なスタイリッシュ映像を短いカットでつないで、バックには美麗な音楽。格好はいいけどもはやイメージビデオか予告編か。映画的な面白味はとても少ない。アクションのハラハラも、人間ドラマも、そこにはない。
話はよくできているのですよ、たぶん(映画としてはあまり語られないので、頭で補う必要がありますが)。東も西も北も南もない現代の国際社会。復讐と任務の間で揺れるボンドと彼を思う上司。見えない黒幕とうっすら浮かび上がる謎の組織。一応ポール・ハギスですから、それなりのお話です。映画は長ければいいとはいえないけれど、「カジノ・ロワイヤル」が144分、本作が106分。前作より複雑な本作のストーリーを40分も短い尺で、物語を語れないスタイリッシュなぶつ切り映像で。完全に間違ってる。
監督はアクション映画は初めてだとか。「主人公は僕だった」…あれはおもしろかったのに。適材適所、大切ですね。鼻血をだすボンドも切り傷だらけのボンドも諦めるけれど、せめて映画としては楽しませてほしかったな。
前作のコピーは「ジェームズ・ボンドが007になるまでの物語」。
まだ、なれてませんけど…
というより、もうなれないよ。きっと
最後の取って付けたようなガンバレルに涙…
#198
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