ウォンテッド
GOODBYE
ティムール・ベクマンベトフ監督。「ナイト・ウォッチ」シリーズの監督である。地元ロシアで制作を行ってきた彼の、ハリウッドデビュー作が本作である。物語自体はなんの接点もないけれど、全体の雰囲気が「ナイト・ウォッチ」と似ているのがおもしろい。それは作品を包み込む、独特の「価値感」によるものだ。
善と悪。明と暗。正と邪。裏と表。あらゆる価値が相対的で絶対的でない。だからなにもよりどころにできない。なにも頼れない。でもとても強い「流れ」はある。「流れ」だけがある。「流れ」に乗って流されるのか。「流れ」に逆らって進むのか。全てが「自分」しだい。そんな荒涼とした、荒廃した世界観がとてもおもしろい。
その象徴がフォックスだろう。「意思」に対する固い信頼。それゆえの見事な散りざま。端から見ても意味がない生き方。でもそれは彼女にとっては大切なやり方。無情のなかに情があり、感情の中に虚無がある。両極が入り交じった、カオスのなかで生きているのだ。
その映像処理などから何かと「マトリックス」を引き合いにだされるベクマンベトフ監督。でも本作も「ナイト・ウォッチ」も、「マトリックス」みたいな無害ないい子とは違う。もっと歪んでいて割り切れなくて、そして鮮烈だ。
まったく覚えられないであろう名前の監督だけど、これからも注目していますよ。
#192
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