ONCE ダブリンの街角で
その魂は、エメラルドの輝き
実にシンプルな作品だ。アイルランドのストリートミュージシャンが、チェコから来たピアニストと出会い、一時心を通わせ、またそれぞれの道を行く。ラヴストーリーではあるけれど、寡黙で不器用は二人は熱く恋を語るわけではない。通常の「感動的な」ラヴストーリーを期待するとガッカリする。なにしろ主演の二人には役名もないのだから。
そんな二人の代わりに熱く語るのが、本作の本当の主役である「音楽」だ。ロックの聖地はイギリスかも知れないが、となりのアイルランドはイギリスより熱い。熱いアイルランドの音楽が、全編に渡って切々と訴えかけてくる。
音楽は世界を変えたりする力を持ったりはしない。でも音楽が、人の心にとても強い力を及ぼすのは間違いない。人の心を人の生活を、なにか違ったものにしてしまう力がある。そんな音楽の強い力を、この映画は感じさせる。
徹夜でスタジオで録音して、ふらふらになりながらみんなで海に出て、バカみたいにフリスビーで遊ぶ。あのシーンが好きだな。曜日も時間もなくて、音楽だけがそこにある。ちょっと懐かしくて、切ない。
#189
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