魔法にかけられて
近いけれど、とても遠い
「ディズニーのお姫様って、かわいいよね」
「でも、あんな人実際にいたら気持ち悪いかもよ」
そんなお姫様が本当にやって来たら、やっぱり気持ち悪かった。浮世離れしたおとぎ話の主人公が、現実世界に持ち込む違和感を笑いのネタにする。それが本作の基本設定である。
お姫様が一声かけると、森の小動物達が笑顔で集う。それを現代のニューヨークでやるとどうなるのか。そのありさまはシュールというかグロテスク。その手が弱い人は要注意だ。完全な善意がいかに笑えるものか。前半の面白さは、本作のアイディアが優れていることを証明している。
しかしなぜか笑えるだけの映画では終わらない。後半に向けて本作の流れは微妙に変化を見せる。「おとぎ話」と「現代」、「夢」と「現実」。最初はあつれきを生み、反発しあう両者。しかし両者は、やがて惹かれあう。「夢」は「現実」のなかに、自分の抑圧されていた何かを見る。「現実」は「夢」のなかに、自分の諦めてしまっていた何かをみる。
本来交差することのない両者の間に作用する引力。その行方を見守るのは、スリリングで切ない。そしてそれはまた、プリンセスの成長物語でもある。無邪気で無力で当然のように庇護を求めていた彼女が、ついには自ら剣を手に取り邪悪に挑む。成長により彼女が得たもの、失ったもの。それは誰もが得て、そして失ってきたもの。
もし自分がこの映画の監督だったら、どんな組み合わせで映画を終えただろうか。交わってはいけないもの同士の甘い出会いと、ほろ苦く切ない別れ。やはり元の組み合わせを選びたい。
でも苦くなくて甘いまま、そんな終わりの映画があってもいいのかな。なんていっても「ディズニー」なんだから。
#180
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