ジャンパー
好きな場所に行けるのは、神だけだ
「超能力もの」には、いくつかの盛り上がるパターンがある。たとえばこんな感じのパターンがそうだろう。
【爆発型】
その超能力故に阻害され迫害された主人公が、最後の最後にその力を解き放って大爆発するというタイプ。前半のつらいタメからの大爆発ということで、観客にカタルシスを与えることができる。「炎の少女チャーリー」とか「キャリー」などがこれだろうか。
【成長型】
超能力を己の欲望のままに行使し堕落する主人公。それに対して手痛いしっぺ返しをうけることで、力よりも大切なものがあることを学び、主人公が成長するというタイプ。成長物語、教訓話としてドラマ的にまとまりやすく、失敗~再生の部分で感動させることができる。「バタフライ・エフェクト」とか、超能力ものではないが道具=超能力と置き換えると「ドラえもん」なども典型的なこのタイプ。
で、本作である。冒頭から主人公が欲望のままに力を行使しまくるという展開。そしてそんな彼を殺そうと追跡してくる謎の「パラディン」。一見【成長型】の基本パターンである。
しかし本作の主人公デヴィッドは反省しないし成長しない。周りに迷惑かけようが何しようが、基本的に自分の欲望に忠実。我慢のできない、自分が一番の男である。それは命を狙われようが彼女が捕まろうが、映画の最後まで変わらない。ドラマとして観客が感情移入するのはちょっと難しい。
では「パラディン」に共感できるかというと、一般人の感覚ではそれも難しい。秩序の維持という点では理解できるが、基本的に殺し屋、狂信者タイプ。取り締まるというよりも問答無用に命を取りに来るのが怖い連中だ。
ということで本作は、わがままなダメ男と狂信的な殺し屋がひたすら戦うという、ドラマとしての要素が希薄な、盛り上がりどころが難しい映画となってしまったのである。確かに戦いの描写は面白いのであるけれど、それだけで90分は持ちません。ダグ・リーマンらしい美しくゴージャスな映像と、世界の名所、完成度の高いCGだけでは引っ張れない。これでは60分くらいが限界だろうか。
ヘイデン・クリステンセンは、アナキン・スカイウォーカーに続いての「神の力を持ったダメ男」役。この手のわがまま自分勝手キャラクターが妙にはまっているのが気になります。もちろん、演技なのでしょうけれど…
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コメント
この手の話は好きなはずなのに、どうも違和感あると思ったら「成長しない」せいでした。
なんかすっきりしました。どうも。
投稿: rukkia | 2008/03/03 21:09
「スター・ウォーズ」では成長せずに地獄に堕ちましたが、「ジャンパー」では成長しないまま何事もなくエンディングを迎えましたからねぇ。
オチがないというかなんというか…
投稿: starless | 2008/03/04 20:49