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2008/02/28

光の帝国 常野物語/恩田 陸

Hikari 僕たちは、光の子供

恩田陸の小説はカメレオンのようだ。推理小説のようでいて、学園小説のようでいて、SF小説、恋愛小説、怪奇小説。そのどれでもあるようで、どれでもない。ジャンルわけ不能なおもしろさがある。本作は超能力を持った一族という「マイノリティ」の苦難を描いた、伝奇SFとでもいった作品である。しかしその読み口は、そのような作品設定からはあまりにかけ離れている。

「常野」と呼ばれる一族は、常に野にあり、権力を持たず、群れない。支配する側に回ることも、支配する者にすり寄ることもない。その圧倒的な能力を顕示することなく、常に耐えて、そして静かに待っている。実にスケールが大きく、壮大なその作品の世界。しかしそんな彼らの物語は、あまりに淡く、あまりに瑞々しく、そしてあまりに切ない。伝奇SFでこんなに涙が出ることなど、この作者の作品以外ではありえないだろう。

本作は30ページ弱の短編が10編収録されている。その小説としてのボリュームの無さと比して、その内容の密度は圧倒的だ。これだけのアイディアを使えば、近代日本の裏側を描いた一大叙事詩を創り上げることだって簡単だろう。なのに作者は、こんなに短く、こんなにひたむきで、こんなに儚い物語を、たった10編だけ生み出した。

とても贅沢で、とても美しい。

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