L change the WorLd
デスノートで操れる死の時間は人間界単位で23日間以内である
スピンオフというものは基本的にファンサービスであり、ファンが楽しめればいいと思っている。そういう意味では本作はまさしくスピンオフ。「デスノート」前後編を見ていなければ絶対訳がわからない。Lが好きでなければ見ても面白くない。なにしろ本作の基本設定が「デスノート」の完全ネタバレなのである。「デスノート」を見ていない人は絶対に見てはいけない映画だ。
前作までの未公開シーン風のカットを挟みながら後日談が語られていくわけだが、前作までの脚本と比較すると(前作までと異なり本作はオリジナル脚本であるということを考慮しても)やや本作の脚本は弱いかも知れない。最大の難点は天才と対峙する悪の存在感、魅力が圧倒的に欠けている点だろう。
何をやりたいのかわからない誇大妄想狂。知力も武力も中途半端。その行き当たりばったりの行動は、Lの知性と対決させるにはあまりに物足りない存在だ。「L最後の事件」というには内容が乏しすぎる。それよりは、寝る間を惜しんでものすごいスピードで未解決事件のファイルの山を片付けていくLの姿の方が、よほど感動を覚える。
それでも「Lを見る」という観点からいえば、ファンの期待に応えてくれるだけの内容はあるだろう。屋外に引っ張り出され、さまざまな場所で活動するLが見られるのは間違いない。そして色々な場所で色々なことをするLを見せることが、Lの新しい面を見せるのではなく、どこへ行っても変わらないLの本質を浮かび上がらせている。
Lは知性の存在だ。自転車に乗ろうが、走ろうが、飛行機に飛びつこうが、それは変わらない。そしてLはまた、「待つ」存在でもある。自分の知性を信頼し、自分が信じた人を信頼し、自分が導き出した答えが出るのをひたすら待つ。待てる力がある。刻一刻と自分のタイムリミットが迫っていても、じっと待てる。Lの強さがスクリーンからしっかりと感じられる。
そんな「静かな名探偵」の姿をもう一度見ることができてよかった。
#174
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マグニフィセント・セブン(2017.02.18)
- ザ・コンサルタント(2017.01.28)
- 本能寺ホテル(2017.01.23)
- アンダーワールド ブラッド・ウォーズ(2017.01.09)
- Year 2016(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント