28週後...
「コードレッド」発動
前作「28日後...」は不満が残る作品だった。前作そして本作でテーマとなっている「レイジ・ウイルス」。その名の通り感染者は「怒り」の感情のみを有するようになり、見境無く他者を攻撃するようになるというしろものだ。つまり感染者は「怒り」に支配されているだけで人間と何も変わらないという設定なのだ。
このアイディアをふくらませれば。たとえば感染者と、感染者への「怒り」に支配された非感染者を対比させれば。感染者と非感染者の境界線の曖昧さを物語に取り込んでいくことができるならば、人にとっての「怒り」をテーマにして面白いストーリーが出来るような気がしていた。しかし結局前作は、単なるゾンビ映画の枠を出るものではなく、低予算ゆえのスケール感の乏しさのみが印象に残ってしまった。
そして本作においても、物語は典型的な「拡大再生産版ゾンビ映画」でしかなく、あいかわらず目新しさは感じられなかった。しかし前作になかったものがある。前作より引き気味の視点をとり、主人公たちの逃避行よりも、ロンドンの、イギリスの、文明の死に焦点を当てている点だ。
死に絶え動くもののない街。ナパーム弾で無慈悲に焼き尽くされ、神経ガスで覆い尽くされていく街。それらがその内容とは裏腹の、静かで美しい映像で描かれている。ほんのちょっとしたきっかけで、すべてが崩れていく。その「滅び」のやるせなさ、「滅び」の甘美さが印象的だ。またその音楽も、いかにもブリティッシュ・ロック的な陰鬱で甘くて沈み込むような旋律で、「滅び」の演出に一役かっている。
アメリカ映画である「アイ・アム・レジェンド」が、潤沢な予算を使いながらもまったく「滅び」を演出できなかった点を考えるとおもしろい。
この「滅びの美学」こそが、英国映画としての本作の、最大の見所ではないかな。
#171
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