ボーン・アルティメイタム
ジェイソン・ボーン、合衆国上陸
「真面目」なスパイ、ジェイソン・ボーン・シリーズもいよいよ完結編。本作も前2作の路線を完全に継承しており、前作までのファンを裏切ることはない。
シリーズを通して感じるのは、そのリアルな諜報員たちの存在感だ。善も悪もなく、あるのはただ敵と味方。目的のためには手段を選ばず、邪魔する者は全て排除する。そんなシンプルで残酷なスパイたちの世界が見事に描かれている。
そしてそんな世界に放り込まれるのが、研ぎ澄まされた鋼の肉体と、あまりに脆い心をあわせ持った男、ジェイソン・ボーンである。もっとも適合したハードウェアともっとも不適合なソフトウェアをもった男が、スパイたちの論理を破壊しながら、自らのために戦い続ける。そんなシリーズの魅力は本作でも健在である。
またジェイソンと女性との関わりもまた、シリーズを通して異色である。スパイと女性といえば、それは守るべき対象であり、足手まといであり、敵の甘い罠であるのが通例。しかしジェイソンは違う。彼は女性を守っているようでいて守られている。敵だろうが味方だろうが、あらゆる女性たちに守られ、助けられて進んでいく彼のあり方が、とても印象的だ。
そしてシリーズの最後を飾る本作のラストシーンがなんとも素晴らしい。シリーズを通して脇役としてがんばった彼女のあの微笑み。あの微笑みには、シリーズを通してジェイソンを守ってきた女性たちの想いが凝縮されている。
そして水から生まれ、水に還り、また水から再生する。シリーズの冒頭にリンクし、きれいな環になる、美しいエンディング。
これほど見事に幕を引いたのだから、続編など考えずにジェイソンの物語はここで終わりにしてほしいな。
このまま消えてしまえば、ジェイソン・ボーンはきっと伝説になる。
#160
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