レミーのおいしいレストラン
誰でも名シェフ
もともとアニメーションは「動くマンガ」だった。だから当然その題材もマンガであり、「アニメ=子ども向け」とされてきたのは間違いではなかった。お店に行けば映画のDVDとアニメのDVDは違う棚で売られている。一般の映画とはまったく別物だった。
ところが最近はそうでもないようだ。特にピクサー製作アニメのグレードは凄まじい。「子ども向け」などとはいっていられない。「映画を作る際に選択した手法がたまたまアニメだっただけ」そんな声が聞こえてきそうなほど、グラフィックだけではなく映画としての内容も充実している。
ちなみに本作の冒頭には異星人の地球侵略(?)をテーマにした短編映画が併映されているが、これを見ただけでもレベルの高さが大いに伝わってくる。セリフが一切無いにもかかわらず観客を笑わせるテクニックと、さりげなく本編の仕掛けを暗示させるおしゃれさ。本当にたいしたものだと思ってしまう。
本作もしゃべるネズミが主人公という、どう考えても「子ども向け」の設定。しかしそんな見かけに騙されて本作を見送ってしまってはもったいない。「動くマンガ」ではない「アニメで作った映画」。そんな「新しいもの」を認めるには、本作でイーゴが言うように若干の勇気が必要かもしれないけれど。
ネズミという最も台所にいて欲しくない生き物がつくった素晴らしい料理。そんな「新しいもの」はパリのみんなに受け入れられたのか。もし本作が「子ども向け」作品だったらみんなは諸手を挙げて受け入れていただろう。レストランは星を取り戻し大繁盛。レミーはパリの人気者になってめでたしめでたし。ハッピーエンドである。でも世の中はそんなに甘くない。実際は衛生局の手入れを受けてレストランは閉鎖、倒産。主人公が父から受け継いだ大切な店は失われてしまうのだ。
でもレミーたちの思いは虚しく消えてしまったわけではない。たった一人だけれど、もっともレミーたちから距離の遠い、もっとも心の冷たかった人に確実に届いていた。ハッピーエンドというには小さすぎるけれど、小さいからといって価値がないわけではない。
大きい幸せと小さい幸せ。思いを届けたレミーたちの満足は、実はどちらも変わらないのだ。喜びは大きさとは関係がない。充実感は幸せの規模では計れない。本作から伝わるそんな想いは、大人たちにこそ意味があるのかもしれない。
#153
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マグニフィセント・セブン(2017.02.18)
- ザ・コンサルタント(2017.01.28)
- 本能寺ホテル(2017.01.23)
- アンダーワールド ブラッド・ウォーズ(2017.01.09)
- Year 2016(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
こんばん。
対応が果てしく遅くなり、申し訳ございません。
トラックバックありがとうございました。こちらからもさせていただきます。
ピクサーは相変わらず笑いのツボを押さえた作り方をしていますね。絶妙の『間』の取りかがうまいのでしょうけど、これは昔の宮崎アニメにも言えることですね。
キッチンでは天敵あるネズミに料理を作らせということで、ことある毎に手を洗わせたり、清潔感に関することが多かったですが、それでも人間には判らなく、今回のように結末になってしまいました。
それでも、登場人物たちは、レミーも家族も、リングイニも、イーゴも、グストーもきれいにおさまって感動でした。小さな幸せに見えて、彼らにとってはとても満足できる幸せであったことは、表情でわからせてくれますよね。
感動できる一品でした。(^^)/
投稿: 白くじら | 2007/12/31 22:10
おひさしぶりです。
というより、もう、あけましておめでとうございます、の時期ですね。
お忙しいようですが、お身体には気をつけてください。
投稿: starless | 2008/01/01 01:14