リトル・ミス・サンシャイン
小さな小さなロードムービー
なんとなくイライラしていて、なんとなく欲求不満。そこそこ家族への愛情はあるけれど、一緒にいるとやっぱりウンザリする。本作で描かれる家族は、個性的なキャラクター設定をされてはいるが、実はどこにでもいそうな現代の家族の姿だろう。そんな各々不満でいっぱいな家族たちが狭いバスの中で顔をつきあわせ、ぎくしゃくしながら旅をする。これはそんな映画である。
個性的な俳優たちの演じるドラマは、何か突飛な事件が起きるわけではないのになぜか面白い。てんでに自分勝手に話しまくる車内の様子は、見ているでだけで笑える出来。特にアラン・アーキン演じるいい加減な祖父は秀逸。アカデミー賞受賞も頷ける。
また同じく脚本賞を受賞したシナリオもいい。さりげなくひかれた伏線も見事だ。じいさんのエロ本やオリーブが勝手に持ち出した視力検査表。ちょっとした小道具が実に効果的にイベントを盛り上げている。ラストもそうだ。ここまでなんでダンスの練習風景が描かれなかったのか、ほんと最初から最後までじいさんにやられっぱなしの映画である。
天真爛漫なオリーブと、一癖ある家族たち。そんな一癖あるキャラクターに素直に感情移入できるのは、脚本のうまさだけでなく観客の中にも彼らに通じる部分が少なからずあるからだろう。彼らは病んでいるかも知れないが、私たちも同じなのかも知れない。
勝ち馬と負け犬。アメリカンドリームの国から、このどちらでもない生き方を呈示する映画がでてくる。アメリカも疲れているのかな。
クラッチが壊れていてぎくしゃくするけれど、バスは乗り続けることに意味があるんだ。
#142
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