時をかける少女(2006)
筒井康隆の名作ジュブナイル、初のアニメ化
子どものころ大好きだった日本のSF作家といえば、小松左京と筒井康隆だろう。「読み漁った」といってもいいほど多くの作品を読んだのだけれど、なぜか「時をかける少女」は読んでいなかった。子どもでありながら「ジュブナイルは子ども向き」という生意気な理由からだろうか。実写版映画もTV版も見ていないので、今回が初の「時かけ」ということになった。
タイムトラベルとタイムパラドックス。王道SFの骨組みにジュブナイルの定番「謎の転校生」。主人公はちょっと男勝りで元気な今風の女の子。とてもまとまりのいいパッケージングだ。
そして物語は「高校バタフライ・エフェクト」である。しかし本作には「バタフライ・エフェクト」の持つ悲壮さは微塵もない。コミカルに繰り返されるパラレルワールドには思わず笑ってしまうほどだ。最後には命に関わるような問題も引き起こされるのだけれど、物語の基調は高校生同士の淡い恋愛におかれており、パステル調の色合いとも相まって、とても爽やかな作風となっている。
タイムリープという神に比肩する力の大きさから比べると、あんなに個人的であんなにささいな問題にこだわり続け、力を乱用する真琴。物語に壮大さはなく、実にパーソナルな範囲でドラマは展開する。そんな主人公の自己中心的な行動は、一見観客の感情移入を阻害しているようでいて、実はそうではない。
そう、むかし高校生であったならば思い出せるはず。あのころは「あんなささいなこと」が自分にとって一大事だったことを。自分のことを考えるだけで精一杯だったことを。一生離れることはないと感じていた友人たちを。将来に対する夢と恐れを。
そして未来は希望ばかりでないことを知ってしまったがゆえに、未来に思いを託す真琴を見て感じる切なさ。かっての高校生たちには伝わるはずだ。
全速力で生きる真琴の姿に共感できる部分が、まだこころのなかに残っているだろうか。
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