ダイ・ハード4.0
「世界一運の悪い男」が帰ってきた
もともと「ダイ・ハード」の魅力はどんなところにあったのか。
それはとんでもない事件にたまたま巻き込まれた「冴えない刑事」ジョン・マクレーンが、精鋭のテロリストたちを粉砕していくさまにあった。武力の差を克服するためには機転をきかせるしかなく、彼の機転を効果的に演出するためには、その舞台が閉鎖的で見通しのきかないことが必要だった。そしてそんな自分の不運を呪う彼の「ぼやき」や「悪態」。そして敵を「おちょくる」やんちゃさ。彼のある種「庶民的」なパーソナリティーが、クールな敵を打ち負かしていく様も快感だった。
ヒットしたアクションものの続編。観客の期待と増加する予算。その結果として映画は量的に拡大し「派手」になっていく。「ダイ・ハード」シリーズも回を追うごとに派手になった。ビルから空港へ。空港から街へ。舞台も拡大し続けた。これはアクション映画の宿命でありやむを得ないところだろう。
狭いビルの中とは違い、広いところで強大な武力と対峙した場合には、機転だけでは生き残れない。その結果、彼は「冴えない刑事」から「スーパー刑事」に変貌していく。彼の「不運さ」は減少し、「ぼやき」も似合わなくなっていった。
こう考えると、「ダイ・ハード」は拡大再生産が効かない構造だったといえるだろう。拡大していくことが本来の魅力をそぎ落としていってしまうからだ。
そして本作は12年ぶりのシリーズ最新作である。「ロッキー・ザ・ファイナル」のように原点に立ち返るわけでもなく、シリーズとは名ばかりの全くの別物になってしまうわけでもない。そこにあるのは至極まっとうなシリーズの続編だった。
「3」よりさらに量的に拡大し、舞台は広くなった。敵も強大になり、マクレーンも比例して強くなった。ここまでのシリーズの流れに沿った続編づくりだといえるだろう。
本作のアクションはもはやアクションというよりもスペクタクルだ。マクレーンの活躍っぷりは、もはや「スーパー刑事」ではなく「スーパーマン」といった方がいいようなとてつもないレベルに達してしまった。ヘリであろうがジェット戦闘機であろうが、何も彼を止められない。もはや彼に「ぼやき」は似合わない。ぼやきたいのはテロリストたちだろう。彼に出会ってしまったテロリストの方が不運なのだ。
そしてマクレーンも歳をとった。「ぼやく」かわりにじっと耐える姿が似合う歳ともいえるかもしれない。そして本作のパートナーたち。ファレル、ワーロック、そして娘のルーシー。「子供」たちを助け、そして助けられるマクレーン。父としてのマクレーンが描かれた部分はなかなか興味深かった。
意表をつくサプライズも無いかわりに、ガッカリする出来でもない。でもとりあえずマクレーンはまだまだ元気だった。それで良しとしておこう。
ダイ・ハード4.0@映画生活
#139
| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: ダイ・ハード4.0:
» 「ダイ・ハード4.0」:木場三丁目バス停付近の会話 [【映画がはねたら、都バスに乗って】]
{/kaeru_en4/}なんだ、あの橋、包帯巻かれちゃったみたいに。修繕中か?
{/hiyo_en2/}もしかしてテロリストに襲われたとか?
{/kaeru_en4/}マクレーンが間違えて壊しちゃったとか?
{/hiyo_en2/}あ、言えてる。「ダイ・ハード」のマクレーンて何でもすぐ破壊しちゃうから。
{/kaeru_en4/}本人は、仕方なく事件に巻きこまれたと思ってるらしいが、俺たちから見たら好きでやってるとしか思えない。
{/hiyo_en2/}「世界一運が悪い男」じゃなくて「世界一運が... [続きを読む]
受信: 2007/06/25 21:07
» 『ダイ・ハード4.0』 [ラムの大通り]
(原題:Live Free or Die Hard)
----このシリーズって12年ぶりニャんだって?
「うん。自分くらいの年になると、
そんなのあっという間だけど、
前の映画ができた年に生まれた子供は
もう小学6年生になるという計算。
最初の映画ができた年の生まれだと、
大学1年生か浪人か、はたまた社会人」
----時代の移り変わりは早いよね。
「うん。この映画ではその犯罪が
合衆国そのものをジャックするサイバーテロの設定。
これも昔ではあまり考えられなかったこと」
----でもサイバーテロと言... [続きを読む]
受信: 2007/06/25 22:27
» ダイ・ハード4.0 [★YUKAの気ままな有閑日記★]
『ダイ・ハード』シリーズは大ー好き 時が流れ髪の毛が消失しようとも、運の悪さだけは変わらないジョン・マクレーン刑事を観に先行上映へ〜【story】デジタルによって制御されている全米の都市機能の壊滅を狙う謎のサイバーテロ組織が動き出し、システムがテロによって攻撃されようとしていた。アメリカ政府ですら機能不全に陥ってしまう緊急事態のなか、これまで幾度となく危機を救ってきたジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィルス)が、再び事件解決に乗り出す― 監督 : レン・ワイズマン 『アンダーワールド』『アンダー... [続きを読む]
受信: 2007/06/26 07:09
» 【2007-89】ダイ・ハード4.0(LIVE FREE OR DIE HARD) [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
人気ブログランキングの順位は?
全米強制終了
完璧なサイバーテロVSアナログ刑事
あの男、再起動。
[続きを読む]
受信: 2007/06/27 22:37
» ダイ・ハード4.0 [小部屋日記]
Live Free or Die Hard(2007/アメリカ)【先行上映】
監督 :レン・ワイズマン
出演:ブルース・ウィリス/ジャスティン・ロング/ティモシー・オリファント/クリフ・カーティス/マギー・Q/シリル・ラファエリ
あの男、再起動!
アクション映画史上に残る金字塔でもある「ダイ・ハード」シリーズがもどってきた。
全国一斉公開の前ですが、先行上映(レイトショー)で観てきました。にゃは
満席でしたね。
またも最悪の事件に巻き込まれる“最も運の悪い男”が、今回はハイテク犯罪と闘... [続きを読む]
受信: 2007/06/27 23:12
» 映画「ダイ・ハード4.0」 [しょうちゃんの映画ブログ]
2007年46本目の劇場鑑賞です。先行レイトショーで観ました。「アンダーワールド」「アンダーワールド:エボリューション」のレン・ワイズマン監督作品。気シリーズ12年ぶりの続編となるサスペンス・アクション。デジタル制御された全米のインフラ機能を襲うサイバー・テロ...... [続きを読む]
受信: 2007/06/28 10:05
» 映画「ダイ・ハード4.0」 [映画専用トラックバックセンター]
映画「ダイ・ハード4.0」に関するトラックバックを募集しています。 [続きを読む]
受信: 2007/06/28 10:06
» ダイ・ハード4.0 [Akira's VOICE]
デジタルはアナログに勝てない!
[続きを読む]
受信: 2007/06/28 11:32
» ダイ・ハード4.0・・・・・評価額1550円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
ハリウッドのアクション映画の歴史を紐解くと、何年かに一度それまでの常識を覆すような傑作が生まれている。
80年代以降なら「レイダース/失われたアーク」「スピード」「マトリックス」と言ったあたりが、それにあたるだ... [続きを読む]
受信: 2007/06/30 00:33
» ダイ・ハード4.0 [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
『1988年 超高層ビル 占拠 1990年 空港 パニック 1995年 マンハッタン 爆破 2007年 全米 機能停止 あの男、再起動。』
コチラの「ダイ・ハード4.0」は、6/29公開になった"運の悪い男"ことジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)が12年ぶりにスクリーン....... [続きを読む]
受信: 2007/07/01 11:03
» ダイ・ハード4.0(2007) [萌映画]
いままでダイハードのシリーズは見たことなかったのだけど、予告編がおもしろそうだったので見てみる気になった「ダイ・ハード4.0」、予習として「ダイ・ハード」(1988)をTVで見たら結構おもしろかったので、ちょっと期待して臨んだ。
期待通りおもしろかったです。
ニューヨークの警察官ジョン・マクレーンが事件に巻き込まれて一匹狼活躍をするというシリーズの4作目である。
サスペンス要素はあるにはあるけど薄い、アクション莫迦映画なので、以下、微妙にネタバレも含みつつ、まずそうなのは黒文字で。
実は、監督... [続きを読む]
受信: 2007/07/02 11:39
» 『ダイ・ハード4.0』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 『ダイ・ハード4.0』□監督 レン・ワイズマン □脚本 マーク・ボンバック □キャスト ブルース・ウィリス、ティモシー・オリファント、ジェフリー・ライト、マギー・Q 、ジャスティン・ロング、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ケヴィン・スミス ■鑑賞日 6月30日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆ (5★満点、☆は0.5)
ダイ・ハード3から何と12年もの年月が経っているのか(笑) 1と3がジョン・マクティアナン監督、2がレニー・ハーリン監督、そし... [続きを読む]
受信: 2007/07/04 17:41
» ダイ・ハード 4.0 [映画君の毎日]
アメリカでは興行成績ベスト10で初登場2位。
「レミーのおいしいレストラン」に負けるとは…。
??
今回は特別新しい要素を入れ込んだとは思えないが、
無難に楽しめる。
ロッキーにマクレーン刑事、
今後はインディ・ジョーンズにランボーも控... [続きを読む]
受信: 2007/07/05 18:54
» 「ダイ・ハード4.0」これが見納め?だからこそ劇場へ行こう! [soramove]
「ダイ・ハード4.0」★★★★★満足オススメ
ブルース・ウィリス主演
レン・ワイズマン 監督、アメリカ2007年
参考人の青年を移送する仕事、
簡単に片付くと思ったが
これがまたハードな仕事に。
ありえない展開に突っ込みどころ多数あり
だけどそんな...... [続きを読む]
受信: 2007/07/06 13:50
» ダイ・ハード4.0(映画館) [ひるめし。]
あの男、再起動。 [続きを読む]
受信: 2007/07/06 14:12
» 映画「ダイ・ハード4.0」 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
原題:Live Free or Die Hard
3で途切れていたダイハードシリーズに久々4が登場、既に5の製作も決まっているようだ。敵はサイバーテロだが今度もアクションが見所で間違いない・・・
家庭の崩壊、娘は口もきいてくれない、今度こそ幸せは訪れるのか、娘の愛は取り戻せる... [続きを読む]
受信: 2007/07/08 01:13
» 『ダイ・ハード4.0』 [Sweet* Days**]
監督:レン・ワイズマン CAST:ブルース・ウィリス、ジャスティン・ロング 他
STORY:デジタル制御された全米を震撼させるサイバーテロが発生。それに関係してると思われるハッカーの一人、マット(ジャスティン・... [続きを読む]
受信: 2007/07/08 17:05
» 【ダイ・ハード4.0】 [じゅずじの旦那]
全米強制終了!
サイバーテロの「投げ売りが始まる…」
《デジタルによって制御されている全米の都市機能の壊滅を狙う謎のサイバーテロ組織が動き出し、システムがテロによって攻撃されようとしていた。アメリカ政府ですら機能不全に陥ってしまう緊急事態のなか、これまで幾度となく危機を救ってきた元刑事のジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)が、再び事件解決に乗り出す》
監督:レン・ワイズマン
出演:ブルース・ウィリス 、ジャスティン・ロング 、ティモシー・オリファント 、クリフ・カーティス 、マ... [続きを読む]
受信: 2007/07/09 17:13
» ダイハード4.0 [k.onoderaの日記]
3作目公開後からすぐに、ジャングルを舞台にする構想とか巨大津波を使ったアイディアなど、何度も企画は出たのだが、全て流れてきた4作目。
紆余曲折あって、やっと公開できたのだが、さすがに歳をとり過ぎたブルース・ウィリスは... [続きを読む]
受信: 2007/07/14 22:06
» シリーズの中では一番面白い!『ダイ・ハード4.0』 [水曜日のシネマ日記]
体を張って凶悪犯と戦う刑事ジョン・マクレーンが活躍するアクション映画「ダイ・ハード」シリーズ第4弾です。 [続きを読む]
受信: 2007/07/20 19:40
» ダイ・ハード4.0 (Live Free Or Die Hard) [Subterranean サブタレイニアン]
監督 レン・ワイズマン 主演 ブルース・ウィリス 2007年 アメリカ映画 129分 アクション 採点★★★★ 子供の頃から映画を観続けてきて、その登場人物らに理想の大人像なり男像を見出してきちゃってた私。まぁ、どれもこれも理想のまま終わり充分に育ちきっちゃったんですが..... [続きを読む]
受信: 2007/07/26 00:41
» ダイ・ハード4.0 [シネクリシェ]
ストーリーが単純でわかりやすく、それでありながらハイテク(というより、ハイテクもどき)やアクションシーンも盛りだくさんです。 全体をそつなくまとめてあり、ある意味とても優等生的なアクションバラエテ... [続きを読む]
受信: 2007/07/28 16:33
コメント
こんばんは。
期待してなかったのですが、なかなか面白かったです。
マクレーンを閉じ込めるかわりに、敵をサイバー空間に閉じ込めて、マクレーンから手出し出来ない様にしてあったり、色々と工夫がされていたと思います。
まあショボイおじさんがヒーローになるという第一作のインパクトは、やはり再現できませんけどね。
投稿: ノラネコ | 2007/06/30 00:43
ノラネコさん、コメントありがとうございます。
>ショボイおじさんがヒーローになるという第一作のインパクト
結局はこれって1回限りなんですよね。
一度ヒーローになってしまえば、以降はヒーローであり続けるしかないわけで、おじさんとヒーローを行ったり来たりするわけにいきませんものね。
第1作はその一度しかないチャンスをものの見事にモノにしたわけですね。
投稿: starless | 2007/06/30 23:24