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2007/05/17

父親たちの星条旗

Ff 一枚の写真により運命を狂わされた「普通の人々」

予告編などを見ると「プライベート・ライアン」そっくりな印象を受けるのですが、実はかなりテイストの違う映画です。残酷な戦闘描写もそれなりに含まれますが、その「残酷さ」そのもので強烈に戦争への嫌悪感をかき立てた「ライアン」ほどのビジュアルインパクトがあるわけではありません。もちろん擂鉢山攻略戦での陸海空三軍の総攻撃シーンなどは迫力満点です。でもいわゆる「戦争映画」のように、映画そのものを引っ張っていくような戦闘シーンではありません。むしろ映画として重点が置かれているのは戦場以外、星条旗の3人のアメリカ本国での日々なのです。

ふとした偶然で分不相応な「付加価値」を身につけてしまった平凡な3人。そしてその「付加価値」に翻弄される彼らの姿を、イーストウッド監督は堅実に描いています。主人公たちは決して自分たちの思いを声高に叫ぶわけではありませんし、押しつけがましい演出があるわけでもありません。でも彼らの気持ちが静かに伝わってくる。そんな控えめだけれども、力強いストーリーです。

また、硫黄島での戦闘、本国での国債キャンペーン、現在の3つストーリーを交互に進めていく脚本も見事です。硫黄島での出来事が少しずつ明らかになるにつれて、キャンペーン中の彼らの思いが少しずつ観客に伝わってくるのです。この、一気に伝わってくるのではない、少しずつ伝わってくるのが本作の大きな特徴ではないでしょうか。

政府批判、反戦メッセージなどはそれほど全面にはでてきません。中心はあくまでも3人の「個人的な」物語なのです。でももし観客がそれらについて考えたいと思うならば、その材料はしっかり映画の中に含まれています。本作は決して「説教」をする映画ではなく、3人の気持ちを観客に伝えるための映画なのです。

そんな彼らの気持ち。彼らが本当に大切だったのは、「国」でも「軍」でも「勝利」でもなく、「両親」でも「兄弟」でも「恋人」でもなく、ともに戦った「仲間」でした。時代も場所も違うけれど、「ブラックホーク・ダウン」で描かれたソマリアで戦った彼らの思いも同じでした。

国家の意思により、戦争という大きな行為の中で道具として使われるためだけに集められた彼ら。死と隣り合わせの彼らにとって、仲間はとてもはかない存在です。そんなはかない存在のために必死に戦う彼らの、なんとせつないことでしょう。

#136

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Hello, Your site is great. Regards, Valintino Guxxi

投稿: | 2007/05/19 17:18

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