レディ・イン・ザ・ウォーター
ナーフはやってくる、預言を与えるために
守護者たちは目覚める、ナーフを守るために
「どんでん返し」は映画にとってエンディングのあり方のひとつではあっても、映画そのものではないはず。そもそも「どんでん返しがある」と悟られている状態で、それを隠しおおせるのは結構難しい。
「シックス・センス」だって、タイトルを始め見切るだけの材料は十分与えられており、それがあると知ってみれば多くの人は推測が可能でしょう。それでもあの映画は怪談として面白く仕上がっている。出来のいい推理小説は、途中で犯人を当てることができても、小説としてちゃんと面白くなっているのと同じです。
それでもM・ナイト・シャマラン監督は「どんでん返し監督」になってしまった。皆が彼にあの時のような「ひねり」を求めている。彼の映画は「ひねり」の出来具合で作品としての評価が下されてしまうことになってしまいました。
彼の映画の中で、本作は最も評判の悪い作品のようです。興行的にも失敗。最近では「最悪映画」としてラジー賞にも数多くの部門でノミネートされています。それもそのはず。本作は「bedtime story=おとぎ話」。もっとも「ひねり」とは縁遠い存在なのです。
おとぎ話は予定調和な世界。無駄な登場人物はなく全てが役割を与えられています。アパートの皆は何故いとも簡単にナーフの存在を受け入れたのか。それは彼らがナーフを受け入れるために存在しているからなのです。
おとぎ話にはあるべき結末が決まっています。皆が望むその結末に向けて、物語はひたすらに進んでいきます。シャマラン監督の映画が皆の予想を裏切る結末を期待されていたのとは異なり、おとぎ話は皆の予想通りの結末を期待されているのです。
でもそんな映画があってもいいじゃないですか、だって映画の中のみんながあんなに一所懸命にがんばっているんですから。
「めでたしめでたし」で終わらなければおとぎ話にはなりません。
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コメント
TB&コメントありがとうございました。
シャマラン監督の作品はテーマがハッキリしているし、
なによりメッセージ性のある不思議な世界観が文句ナシに好きなので、
これからもこの路線を崩さないで欲しいと切に願うところではありますが・・・。
(とはいえ、スタジオから全面拒否されちゃなぁ・・・)
とりあえず、『レディ・イン・ザ・ウォーター』の原作本を読んでみたいと
思ってるのですが(とりあえずは立ち読みで。^^;)、なかなか見つかりませんのです。
投稿: 小夏 | 2007/02/11 08:26
こんばんは。
>スタジオから全面拒否
彼の作品はそんなに製作費も高くなさそうですし(でも一時期、監督の脚本料が高額だったという話も)、どこか作らせてあげればいいと思うのですが。映画の世界も厳しいですね。
>、『レディ・イン・ザ・ウォーター』の原作本
これって「絵本」のことですか?日本でも出てたんですねぇ。
投稿: starless | 2007/02/12 23:04
こんにちは。
意外なオチもなければ、不揃いな人たちがなぜかきっちりはまっていくこの話、私も、みんなが一所懸命がんばっているところが好きでした。
トラックバックしていきますね。
投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2007/03/02 17:46
こんばんは。
かなりこぢんまりした映画でしたが、そんなに悪くはなかったと思うのですが。
どうも「シャマランブランド」に観客が求めるものと、本人が創りたいものに相当ギャップがあるのでしょう。
次回作はどうなりますか、正念場ですね。
投稿: starless | 2007/03/03 20:29