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香港産クライムストーリーをハリウッドスターで豪華にリメイク
「私は普段プロットに重きを置いた映画を作らない」
本作の監督、マーティン・スコセッシの言葉である。
本作を見て最初に感じるのは、圧倒的なリアリティーと迫力で押し寄せてくる裏社会の日常である。下品で冷酷で粗暴で貪欲。そんな彼らの生活が見事なテンポでつづられる。そしてそんな日々を眺めているのがとても楽しいのである。
ジャック・ニコルソンを軸に、レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンが絡むキャストの演技も素晴らしく、彼らのやり取りを見ているだけでまったく退屈しない映画となっている。
しかしその一方で、警察とマフィアそれぞれのスパイ狩りという本筋のストーリー部分はおざなりといってもいいだろう。狩る者と狩られる者の虚々実々の駆け引きを楽しむ、といったレベルにはまったく到達していない。
特にニコルソンが死んでからの展開はどうだろう。そもそもいつまでも机の上に封筒を放置しておくとは、あんな間抜けがよくここまで生き残れたものだ。唐突に現れた第三のネズミ、いつか出てくるだろうと思っていたディグナム。衝撃のシーンが続くが衝撃の展開ではない。殺せばいいってものではないでしょう。もう少し映画の格に見合った、気の利いた展開を考えて欲しかった。有名俳優を見事なヘッドショットで血祭りに上げたのは凄いと思ったけれど。
あんな展開にするなら、ニコルソンが死んだ夜に適当に出会わせて相打ちにでもしてくれた方がテンポ良く終われたんじゃないだろうか。せっかくみんな同じ場所にいたのに。
女医の存在も意味のあるキャラクター設定とは思えなかった。彼女がコリンの正体を知ったこともストーリー上必要とも思えなかったし、ビリーが預けた封筒も結局使われず。子供についても語られず。重要そうな役なのに何の役にもたっていない。これでは「ラヴシーン要員」である。
ここで思い起こされるのが冒頭の監督の言葉。結局この人は丁寧に伏線をはったり、細かなアイディアでシナリオを組み立てたりするのは不向きなのだろう。でもこんなにストーリーはボロボロでもこんなに面白い映画になるなんて。やっぱり凄い監督なのかも知れない。
最後に「コンフォタブリー・ナム」について。ピンク・フロイドのオリジナル版ではなく、ヴァン・モリソンがヴォーカルをとった「ウォール・ライヴ」のヴァージョンが使われた理由が分からなかった。ギルモアのギターが無いのは百歩譲ってあきらめるにしても、ウォーターズの「麻痺」を感じさせるあの声が無いのではまったく意味がないと思った。そして調べてみた。
ヴァン・モリソンはアイルランド出身だった。
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