007/消されたライセンス
シリーズ第16作 1989年
【007】ティモシー・ダルトン
【 敵 】サンチェス(麻薬王)
【主な舞台】フロリダ~イスマス・シティ
007シリーズにはどうにも評判の良くない作品があります。それが「女王陛下の007」と本作「消されたライセンス」です。「女王陛下」はボンドの結婚と離別、「消された」はボンドの怒りと復讐を描いており、どちらもボンドの「私」的感情を描いているのが特徴です。
どんな危機に陥っても涼しい顔で切り抜けるという、現実感のないクールさがボンドの大きな魅力であることは間違いありません。そんな点から見ると、両作品は「ボンドらしくない」作品であり、また任務に私情を挟むのはスパイ失格ということにもなります。どちらもある意味外伝的な位置づけの異色作であり、シリーズのファンであるほど受け付けない場合もあるようです。
本作はお得意のスカイアクションで幕を開けます。そしてシリーズ初期からおなじみのCIA工作員フェリックス・ライターの結婚式が描かれます。ここでいつにないほどボンドとフェリックスの友情がしっかり描写され、本作のテーマである「ボンドの復讐」の強い動機付けとして作用します。ここでのフェリックス夫妻へのボンドの愛情の表現は、まさに人の良さそうなダルトンならではのもの。コネリーやムーアでは、ここまで両者の絆は感じられなかったでしょう。
全編に渡って「サンチェスvsボンド」にテーマが絞られており、笑いの要素のほとんどないハードな内容となっています。友のプレゼントであるライターで復讐を果たすところなども気が利いています。なにしろ「フェリックスのライター」ですからね。
ボンドの殺し方がいつもより残酷だったり、実験室にガソリンをまいただけで秘密基地が大爆発してしまうなど気になる点も無いわけでは無いですが、なかなか楽しめる一本ではないでしょうか。
本作を持ってダルトン・ボンドは終了。シリーズは過去最長の6年のブランクを迎えることになります。
ここまでで本シリーズは16作。16作で監督が5人しかいないことからもわかるように、本シリーズは「ボンド・チーム」とでもいうべき非常に限られたスタッフで作られてきました。本作の監督ジョン・グレンは「ユア・アイズ・オンリー」から5作連続で監督を務めましたが、それ以前から編集などで本シリーズに携わっています。彼に代表されるお馴染みのメンバーたちの愛情が本シリーズを支えてきたわけです。
次回作以降は、「ボンドの父」アルバート・ブロッコリもプロデューサーの座を去り、監督を始めスタッフも一新されます。007シリーズはここで一度終わったのかも知れません。
#128
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マグニフィセント・セブン(2017.02.18)
- ザ・コンサルタント(2017.01.28)
- 本能寺ホテル(2017.01.23)
- アンダーワールド ブラッド・ウォーズ(2017.01.09)
- Year 2016(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント