007/ムーンレイカー
シリーズ第11作 1979年
【007】ロジャー・ムーア
【 敵 】ドラックス(実業家) ジョーズ(ドラックスの部下)
【主な舞台】カリフォルニア~ヴェニス~リオ~アマゾン
40年以上にわたるシリーズの歴史の中では、当然誰もが認める駄作も存在します。本作「ムーンレイカー」は「シリーズ中の駄作」といえば多くの人が名を上げると思われる作品です。
不人気の最大の原因はたぶん「宇宙」に出たことでしょう。「あまりにも荒唐無稽すぎる」といったところでしょうか。しかし今の時点で冷静に見ると、火山の火口の中に作られた秘密基地に日本刀を持った大勢の忍者部隊とともに乗り込むのとそれほど荒唐無稽さに違いがあるとも思えません。「ラストのお約束を無重力の中でやってみたかったんだろうな」と思えば、なんとなく許せるような気もしてしまいます。特撮も「スター・ウォーズ」には負けていても「スーパーマン」には微妙に勝っているようなレベルです。
しかし本作が駄作と言われてしまう理由は「宇宙」だけではないでしょう。本作は贅沢に予算を使って世界中でロケを行った大作なのですが、そのスケールの割に盛り上がらないのは全編に緊張感が足りないからです。
007シリーズでは、ボンドがさまざまな危機を持ち前の機転で突破していくのが面白さ、スリリングさに繋がるわけですが、本作では「機転」ではなく単に「道具」で切り抜けてしまっています。ホバークラフト・ゴンドラでの逃走やボートからのハングライダーでの脱出など、いつもならボンドの巧みな操縦技術や策略で切り抜ける要素が含まれるはずのシーンが秘密兵器のみで解決が図られています。
これは結局アイディアを出す努力を放棄してお金で解決しちゃったんでしょうね。ロープウェイのシーンだって秘密兵器は出ませんが不自然に鎖で滑り降りて、最後はただ飛び降りただけですもの。ロープウェイ大破壊で無理矢理盛り上げていますが、まったく頭を使っていません。予算があまり多いのも考え物ですね。
またジョーズの不死身っぷりも緊張感を損ねている一因でしょう。死なないヒーローと死なない悪役が戦っても意味がありません。ジョーズを殺したくない気持ちもわかりますけど、それならもう一人怪人系の悪役をたてればよかったのに。
でも「ダイヤモンド」「死ぬのは奴らだ」や「黄金銃」よりは格段に面白い映画だと思います。とりあえずスケール感は味わえますし。
でも前作と本作あたりが、シリーズが一番ヒットしていた時代だったかも知れませんね。
#119
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マグニフィセント・セブン(2017.02.18)
- ザ・コンサルタント(2017.01.28)
- 本能寺ホテル(2017.01.23)
- アンダーワールド ブラッド・ウォーズ(2017.01.09)
- Year 2016(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
なるほど、金で解決したためつまんなくなちゃった、って見方もありますね。
私にとってこれは1、2を争う駄作でしたな。
荒唐無稽さなら火山に秘密基地+忍者のが勝っているとは思いますが(^^;
投稿: rukkia | 2006/12/23 13:45
当時のことを思い出すと、この頃の007ってすごくメジャーでしたよね。テレビでもたくさん取り上げられていたし、広告も大きかったし。まさに「超人気シリーズ最新作」って感じでした。
投稿: starless | 2006/12/23 19:29
突然で申しわけありません。現在2006年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。投票に御参加いただくようよろしくお願いいたします。なお、日本インターネット映画大賞のURLはhttp://www.mirai.ne.jp/~abc/movieawards/kontents/index.htmlです。
投稿: 日本インターネット映画大賞 | 2006/12/26 22:21