007/私を愛したスパイ
シリーズ第10作 1977年
【007】ロジャー・ムーア
【 敵 】ストロンバーグ(海運王) ジョーズ(ストロンバーグの部下)
【主な舞台】カイロ~サルディーニャ
子供のころ本作を見て、とても印象に残っているシーンがあります。物語の中盤、サルディーニャの峠道でロータスエスプリを駆るボンドは武装ヘリに襲撃されます。逃げるエスプリと並走するヘリからは、敵の刺客である美女が妖艶にボンドに微笑みかけます。それを見たボンドも目尻を下げて思わずにやけるのです。
陸と空との追撃戦は迫力満点。そんな命をかけた戦いの最中(実際にこの後、武装ヘリは対空ミサイルで撃墜されます)であるにもかかわらず、当事者同士のなんとも余裕しゃくしゃくでおちゃめな対応。子供心に「大人の世界」、それも日本の大人の世界にはありえない外国の大人の世界を強烈に感じさせられました。どんな逆境でもユーモアや色気を失わず(表面上は)余裕で切り抜けていく。私がボンドを好きになった瞬間だったかも知れません。
本作はロジャー・ムーアの3作目。前2作の不調がウソのように、オープニングの大ジャンプから始まって正に全編絶好調。なによりも全体にみなぎる「大作感」がうれしいです。前2作はスケール感が乏しかった上に、当時の流行と思われるオカルト風味やらカンフーアクションなどを取り入れ、なんとも情けない仕上がりとなっていました。今回は基本的に従来のスパイアクションを中心としたことも成功しているようです(まぁ、また次回作では当時流行のSF風味をとりいれてしまうわけですが)。
また「笑える悪役」ジョーズとボンドのややコミカルな立ち回りも、完全なギャグになってしまう一歩手前でなんとか踏みとどまっています。ショーン・コネリーにはなかったムーアの持ち味がやっと確立されたといえるでしょう。
「ロシアより愛をこめて」以来久しぶりにソ連の女性スパイとの共演となったストーリーもなかなか楽しめます。英米ソ3国が共闘してあたったストロンバーグが結局何をしたかったのかはよくわかりませんが、それはいつものことなので良しとしましょう。
「ゴールド・フィンガー」が初期においてシリーズの原型を完成させた作品だとするならば、本作は来るべき80年代以降の大量消費型大作007の雛形となっているといえるのではないでしょうか。
完全復活、ついに完成したムーアボンド。次回作では本作の勢いに乗って、なんと宇宙へ飛び出してしまいます。
#117
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コメント
私もこれ、ロジャーのなかでは一番の作品だと思ってます。
で、実は映画館で初めてみた007なのです。
いまでも、冒頭の落下傘のシーンで会場からため息が漏れたことを覚えています。
投稿: rukkia | 2006/12/17 20:17
わたしは「ユア・アイズ・オンリー」ですね、映画館で初めて見たのは。
>会場からため息
漏れますよね~やっぱり。そういう経験ってきっと一生忘れないでしょうね。
投稿: starless | 2006/12/18 19:42