亡国のイージス
自衛隊の最新鋭イージス艦「いそかぜ」が何者かに乗っ取られた。東京湾に侵入した「いそかぜ」の標的は首都東京。鉄壁の守りを誇るイージス艦に対して打つ手はあるのか。
「戦国自衛隊1549」「ローレライ」そして「亡国のイージス」。同じ作者(福井晴敏)の原作が、このようにたて続けに映画化されるのも珍しい。
この3作の出来を比べてみると、一番なのは本作「亡国のイージス」だろう。この3作を見ると、つくづく日本映画とは予算との戦いであることがよくわかる。
「戦国自衛隊1549」の製作費は15億円。その大部分を「信長の城」に費やしたようで、見せ場であるはずの「騎馬軍団vs自衛隊」が「騎馬軍団」になっていないのが悲しかった。絶対的な個体数の少なさを補うために、どうしてもカメラがアップ気味になってしまい、妙にこぢんまりした映画になってしまった。
「ローレライ」の製作費は12億円。見せ場は「特殊潜水艦ローレライvsアメリカ太平洋艦隊」である。当然CG・ミニチュア等の特殊撮影が多用されるわけだが、その肝心の特殊撮影の出来があまりにひどい。完全に映画の足を引っ張っている。
そして本作「亡国のイージス」の製作費は12億円。「ローレライ」と同額であるが、本作の舞台はほとんどがイージス艦の艦内という限定された空間のみ。大規模な戦闘シーンもなく特殊撮影もそれほど必要ない。予算に対して無理のない企画が、まとまりのよい映画を生み出したといえるだろう。何しろ見せ場である護衛艦同士の戦闘もレーダースクリーン上で済ませてしまうという潔さ。でも「ローレライ」のようなCGを見せるくらいなら、この方がまだ映画として緊張感が保てる。
視覚的な要素に頼らない分だけ、映画は俳優達のドラマ部分が中心となる。出演しているのはいつもおなじみの日本男優陣。彼らの熱演により、暑苦しいながらも安心して見られる映画となっている。それにしても、これほど女優の出てこない映画も珍しい。
本作を見て一番「偉いな」と思ったのは自衛隊だ。最近は自衛隊が映画協力するのも珍しくはない。しかし「自衛隊のあり方に疑問を持った自衛官が反乱を起こす」という内容の本作に対して、イージス艦やF2支援戦闘機などの最新鋭兵器をもって協力するという度量の広さは賞賛に値すると思う。
主役である「いそかぜ」に本物のイージス艦を使い、それ以外のものは無理して描かなかったこと。これが本作の成功の理由だろう。
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コメント
なんかあまり評判がよろしくなかったので、日本の潜水艦ものは見てませんでした。
…これはそこそこなのでしょうか。
硬派役俳優いっぱいでているので気にはなっていたのです。
機会がめぐってきたらレンタルしてみようと思います。
投稿: rukkia | 2006/10/08 13:43
コメントありがとうございます。
>…これはそこそこなのでしょうか。
まぁ「成功」とは書きましたが、それは「3作の中で」なので、一般的に言えばどうなのかわかりません(笑)。
でも小説の映画化としては悪くないとは思います。真田広之を始めおじさんばかりの暑苦しい雰囲気が苦手でなければ、それなりに楽しめるとは思います。
投稿: starless | 2006/10/08 19:41