X-MEN ファイナル ディシジョン
3作分の見せ場が凝縮、壮絶な最後の戦い。
あまりに説明的な「1」。話が動き出しつつもどことなく中途半端だった「2」。本シリーズはここまで、おもしろいながらも物足りない内容だった。それもそのはず本シリーズは、「1」「2」「3」というよりは「前編」「中編」「後編」、3作を通してひとつの物語を描いたものであり、その中の一部を取り出して1本の映画としてみるのは難しい構成だった。
それは本作「3」でも同様。冒頭から「一見さんお断り」の様相で物語は暴走する。本作で初めて本シリーズを見る人のことなど一切考慮されてはいない。その反面、忠実なシリーズのファンにとっては、待ちに待った至福の時が訪れる。誰もが「X-MEN」に望んだであろう「サイキック・ウォーズ」がいよいよ開幕するのである。
X-MEN側、ブラザーフッド側ともに多種多様なミュータントの手駒が揃いアクションの充実度はシリーズ最高。300分を超える超大作の後半にふさわしい見せ場の連続である。集団対集団ということでコンビネーション技なども見られ、ミュータントの活躍ぶりは見ていてとても楽しい。「1」「2」で感じた物足りなさ、その足りなかった部分が全て「3」に凝縮されているわけで、この充実ぶりはある意味当然のことかも知れない。
そんな本作であるが、大きな不満もある。3作を費やして語ってきたこの戦い。その完結編である本作には、壮大なストーリーが完結したカタルシス、「終わった感」が非常に希薄なのだ。
登場人物が増えた関係で、一人一人を描く時間が減ったのはやむを得ない。しかし主要な人物の扱いがあまりにもぞんざいではないだろうか。前作まで手薄なブラザーフッドの中心となって活躍していたミスティーク。「女は怖いね」彼女の最後はあんな扱いで良かったのだろうか。X-MEN側ではサイクロップス。観客がよくわからないうちに死んでいたとは、なんとも情けない。
ブラザーフッド側の2大強敵、マグニートーとジーン。彼らとの戦いも達成感が薄い。強大な力をもつミュータントに対して、人間がキュアを使うのはわかる。しかし力を持つミュータント同士の戦いにおいて、ミュータントの尊厳を無視した究極兵器を使う。合理的かも知れないが、映画的にはまったく面白くない。1対1でダメなら2対1でも3対1でも。たとえ主要メンバーが倒されたとしても力と力で戦って欲しかった。サイクロップスをあんな扱いにするなら、ここで華々しく散らせてあげた方がよかったのでは。
ジーンとの戦いは、それ単体で見ればよかったと思う。破壊力対再生力の戦い、見応えはあった。でもその直前のマグニートー戦が全てをぶち壊している。ウルヴァリンの最後の選択は「あれしかなかった」のか。でも、殺すくらいの気持ちがあるならキュア使えば?とりあえず生き残るし、たぶん力がなくなればフェニックスも消える。そんな思いが頭をよぎってしまう。
またエンドクレジット前後のシークエンス。色気を出したい気持ちはわかるが、これも中途半端感をかもし出す。全然「終わった感」を味わえません。
私的に「シスの復讐」が感動的だったのは、その強力な「終わった感」(あの映画の場合は「つながった感」だったかもしれない)だった。長大なシリーズに長い時間をかけてつき合い、最後の最後で味わった強いカタルシスが感動を誘ったのだろう。
シリーズのあらゆる物を最大限に詰め込んだ本作だが、それだけが足りなかった。なんとも残念です。
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コメント
あー、確かに「終わった感」、なかったですねぇ。
「女は怖い」は笑ったけどもしかして作戦だったのでしょうか…。
最後、マグニートの向かいの椅子に現れるかと期待しちゃいました。
投稿: rukkia | 2006/09/10 21:39
>マグニートの向かいの椅子
おぉ、それいいですねぇ。
マグニートを見つめる瞳の色がうっすら変わると。
投稿: starless | 2006/09/11 20:51
TBどうもでした。
終わってないですよね(笑
ていうか終わってないって宣言してるようなラストでした。
とりあえず、三年以内にマグニートが主役の悪のミュータント軍団のスピンオフ映画が作られるに一票入れときます。
投稿: ノラネコ | 2006/09/12 00:45
コメントありがとうございます。
スピンオフって、コミックや小説はともかく、映画では意外と見かけませんし、成功例ってほとんどありませんよね。そういう意味では楽しみですね。
投稿: starless | 2006/09/12 19:51