ファイヤーウォール
銀行のセキュリティー主任であるジャック・スタンフィールド。彼の平穏な日常は、自宅を占拠し家族を人質に取った謎の集団によって破られた。彼らの目的は、そしてジャック一家の運命は?
いつの時代にも時代を代表する映画スター達がいる。スター・ウォーズのハン・ソロ役でブレイクし、インディ・ジョーンズ・シリーズでも主演をつとめたハリソン・フォードは間違いなく当時を代表するスターだ。
スター・ウォーズ出演時には30代半ばだった彼は、遅咲きのスターだったといえるだろう。スター・ウォーズ、インディ・ジョーンズという当時の2大人気シリーズに主演して押しも押されぬ大スターにのし上がった彼は、現在のジョニー・デップやトム・クルーズと比べても遜色ないほどの人気ぶりだった。
しかし2大シリーズ以外の出演作にはあまり恵まれなかったのも事実。「ブレードランナー」「刑事ジョン・ブック」「パトリオット・ゲーム」「逃亡者」など話題作・佳作も少なくないが、キャリア全体を俯瞰すると、どうしても尻すぼみな印象を受けてしまう。その存在をおとしめてしまうほどの失敗作こそ無いものの、往時を知るものには何となく物足りなく感じてしまう。
そんな彼の最新作が本作である。
今年で彼は64歳。スクリーンの中の彼もまさに「初老」といっていい姿である。彼の演じるジャックも家族を人質に取られて狼狽し、怯えるばかり。アクション俳優でならした彼のタフガイぶりなどどこにも感じられない。彼の「老い」を見た目と役柄両方を通じて見せつけられるのは、ファンとしてはつらい気もする。
しかしそれが彼の選択だったのだろう。今のご時世撮ろうと思えば何でも撮れる。コンピューターのお世話になれば、80歳をこえるクリストファー・リーにライト・セイバーでの立ち回りを演じさせることも出来る。でも彼が選んだのは昔通りのタフガイではなく、等身大の現在の自分をみんなに見せることだったのだ。
そんな「普通の男」を演じたハリソンだが、年齢的なものかセキュリティーシステムの専門家には全然見えなかったし、そもそも銀行のシステムだって堅牢には見えなかった。本作が意図したであろう「ハイテク強盗に対して、そのさらに上を行くハイテクで反撃するジャック」といった面白さは、ハイテク周りの描写の甘さゆえ、全然描けていなかったと思う。それが本作の一番の欠点だろうか。
ハリソン・フォードの近年の話題といえば「インディ・ジョーンズ4」である。「もうアクションは無理、やめたほうがいい」 そんな意見も多い。でも飛んだり跳ねたりできないインディがいてもいいじゃないですか。「3」のショーン・コネリーを見ればおじいちゃん(失礼)にはおじいちゃんのよさがある。おじいちゃんインディで、ハリソン・フォードにはもう一花咲かせて欲しいなぁ。
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コメント
ショーン・コネリーが69歳で演じた『エントラップメント』は「引退した007路線」がうまい味を醸しだしていて魅力的に見えます。ハリソン・フォードはどういう路線を見出すのでしょうね。
この『ファイヤーウォール』という作品、ハリソン・フォードの右往左往しながらも必死に戦う初老のヒーローという演技が結構好きでした。それなのに作品自体はなぜか今ひとつと感じていたのですが、理由はよくわからないままでした。
それが、
>「ハイテク強盗に対して、そのさらに
>上を行くハイテクで反撃するジャック」
>といった面白さは、ハイテク周りの描
>写の甘さゆえ、全然描けていなかった
>と思う。
…とお書きになっているのを読んで、まさにこれだと納得しました。
投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/10/11 07:17
>ハイテク
ハイテク部分って、小説だとうんちくをたくさん盛り込んだりして、面白く描けると思うんです。
でも映画の場合、そもそもハイテク戦って端末の前で作業しているだけですから、動きも少なくて面白い描写になりにくい気がするんですよね。
それに本当にハイテク戦を描くつもりなら、やはりハリソン・フォードはミスキャストでしょう(笑)。
投稿: starless | 2006/10/11 20:54