ダーク・ウォーター
「リング」シリーズで有名な鈴木光司の小説「仄暗い水の底から」をハリウッドリメイク。
「仄暗い水の底から」。この原作タイトルそのものの陰鬱で、ウェットな雰囲気が全編を支配する本作。「リング」シリーズと同原作者ということでホラーを期待されると思われる作品ですが、恐怖を感じるシーンはほとんどありません。本作から強く感じるものは恐怖ではなく「不安」です。
主人公のダリアは離婚した夫と娘の親権を巡って係争中であり、安定した職業にもついていないため経済的にも不安定であるという、いわば「社会的弱者」として描かれている。そして家賃負担を軽減するため移り住んだ郊外の古いマンションでは、天井からの漏水や物音、老朽化した設備や行き届かない管理人など、様々なことに悩まされる。
社会的な不安定さに起因する不安と新しい住環境からの不安。映画はダリアの感じる様々な不安にびっしりと塗りつぶされていきます。このあたりは個人差もあると思いますが、「神経質」などといわれる不安を感じやすい方であれば、十分にダリアに感情移入して不安な気持ちでいっぱいになれると思います。
ダリアを演じるのはジェニファー・コネリー。美しさの中にも脆さを感じさせる彼女の存在は、観客の不安感をあおる大きな要因となっています。本作全体のムードに及ぼす彼女の影響は多大であり、彼女抜きではこの映画は成り立たなかったかも知れません。
ダリアが原因不明の頭痛に悩まされ鎮痛剤を常用していることや、時々彼女の記憶がとぎれるなど、心理サスペンスっぽいシーンが挿入されていますが、本作は「死者からのメッセージ」という極々スタンダードな怪談話です。何度も映像で強調される貯水槽やタイトルから連想されるように、その結末も意外なものではありません。しかし前述の不安感一杯の演出と相まって、地味ではあるもののじっくり楽しめる怪談映画となっていると思います。
日本の怪談的な感覚で言えば「遺体が発見されて供養されて終わり」でいいと思うのですが、本作では生贄が必要とされています。ダリアには生き残って欲しかった気もしますが、あちら側に行ってしまっても娘を思い続けるダリアの姿がとても感動的だったことを思うと、まぁこの終わり方でもよしとするしかないですね。
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コメント
初めまして、TB返してくれてありがとう
私はオリジナルも見て居るんだけど、どちらかというと
リメイク版のほうが好きです。
黒木瞳よりもジェニファー・コネリーのほうが良い演技をし
ていたと思うので、マンションなどはオリジナルと同じ
セットをくんだそうでオリジナルへのリスペクトを感じました。
投稿: せつら | 2006/07/24 23:40
>せつらさん
コメントありがとうございます。
>オリジナルへのリスペクト
そう、たしかにとても日本的な物語ですよね。
あちらの人にはこれじゃ物足りなかったんじゃないでしょうか。
投稿: starless | 2006/07/25 19:58