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2006/07/02

アイランド

Is 近未来。「汚染」を逃れた人々は「施設」の中で管理の行き届いた安全な生活を送っていた。そんな彼らにとっての夢は、汚染されていない唯一の外界「アイランド」行きの権利を抽選により勝ち取ることだった。

思いっきりSFです。なんとなく不自然な管理社会において、ちょっとしたきっかけからその社会の秘密が暴かれる。実にオーソドックスなSF。最近のSF映画は宇宙戦争や異星人の侵略が中心であり、このようなSF映画はとても珍しい。映像的にも、いかにも「工場」的な「施設」の様子がちょっと恐ろしくて素晴らしい。「施設」のクリーンさと外界の汚さの対比もいい感じである。

主人公であるリンカーン6エコーはふとしたことから「施設」のありかたに疑問を持ち、ついに恐ろしい秘密を知ってしまう訳なのですが、このあたりも安心して見ていられる王道の展開。そしてリンカーン6エコーとジョーダン2デルタの逃亡が始まるわけですが、おや、ちょっと早すぎませんか?映画は約120分、逃亡までが約40分。ちょっと逃亡開始が早すぎるのでは?

その理由は映画を見ればすぐわかります。逃亡セクションはもの凄いアクションシーンで構成されており、物語の必要性以上に時間を取っているのです。

このアクションシーンが大きな見所であることは疑いないのですが、どうも前半のSF映画部分とのマッチングがよくありません。なにしろアクションが派手すぎるのです。「施設」側との追いかけっこという次元ではありません。ハイウェイや看板のシーンなどはもはやマトリックスやミッション・インポッシブル並の大破壊シーン。リンカーンもジョーダンも不死身人間となってしまっています。

この映画のストーリー上のポイントは、単なる「製品」であり人格など持たないと思われていたクローンが、本来引き継がれないはずの「注文者」の記憶・能力等を得ることで人間として思考を始めてしまうことだと思うのです。ですから、リンカーンの悪夢についてのエピソードや彼が日常生活に違和感を覚え始める辺りをもう少し丹念に描写してもよかったのだと思います。本作では長いアクションシーンを挿入するために逃亡後の時間を長めに確保する必要があるため、逃亡前の時間が短縮されています。そのためリンカーンの「施設」に対する疑いが唐突に発生したように感じられてしまうのです。

本来派手なアクションシーンがそれほど必要とされないタイプのSF映画に大がかりなアクションシーンを導入しようとした結果、SF物語の部分にも悪影響が現れアクションシーンも浮いてしまった。「二兎を追う者、一兎も得ず」

それでもクローンと「注文者」との出会いから土壇場のすり替わり辺りまでは、映画ならではの一人二役が楽しめたと思います。「同じ人間が二人出てくる」という面白さを表現するためには、小説などよりも映画の方が優れていることを感じました。

本作のエンディングですが、個人的には「成りすましたまま二人で逃亡」でも良かったと思うんですよね、まるで「ブレードランナー」のように。しかし本作では、リンカーンたちの「施設」への反撃とクローンたちの解放をエンディングに据えています。

その気持ちもわかります。たぶん「雄大な音楽をバックに、荒野にあふれ出てくる白装束の大勢のクローンたち」をどうしても描きたかったのでしょう。しかし、あれほどまでに徹底した管理が行われていた「施設」が、ホログラム設備ひとつ壊されただけで崩壊してしまうというのも説得力ないんですよね。百歩譲ってそれだけホログラム設備が重要だったとしても、それならもう少しちゃんと警備しとけばいいのに。いくら「注文者」の記憶などが引き継がれているとはいえ、「15歳程度」の知力しか持たないクローン一人にあそこまでやられるなんて。「注文者」が「施設」の創設者だとかいうならまだわかるのですが、ただの工業デザイナーですからね。

どうも「描きたいもの」に固執するあまり、物語がないがしろにされた気がする一本でした。

アイランド@映画生活

#094

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コメント

>「描きたいもの」に固執するあまり、物語がないがしろにされた気がする

おお、そうかも!
私はこれ、SFとしてすごく気に入ったのですが、世間の評判がいまいちなので、なんでかーなーと思ってたのでした。
確かに、後半のアクションに時間裂き過ぎなのかも。

投稿: rukkia | 2006/07/02 23:04

こんばんは

この物語的には、管理者側から追跡されるというのは、それはそれは恐ろしいことだと思うのです。逃げる側は何も持たず外界についての知識さえも持っていないのに、管理者側は完全武装で追ってくるのですから。

なのにこの映画では、みるみる管理者側が粉砕されていきますからね。

追跡される恐怖を、さらっと描くくらいで良かったと思うんですけど。

投稿: starless | 2006/07/03 20:30

いや~、もう制作者の暴走を止められない~という感じのアクションでしたね。ここまで来ると唖然を通り越して、次はどう来るのかと思って見入ってしまいます。
じっくり味わう作品にすることもできそうな題材だったのですが、こう来るかという感じで見ていました。
トラックバックしていきますね。ニューヨークのタイムズスクエアの映画館で、反応の良い観客と一緒に見たことを書いています。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/10/11 07:37

たしかにあれほどのアクション映画であるとは予想できない映画でした。

このように観客の予想したジャンルと異なる展開を持つ映画は、往々にして評判が悪くなってしまうことが多いようです。
「フォーガットン」や「フライトプラン」なんかもそうでしたね。

投稿: starless | 2006/10/11 20:31

こんばんは。

私も脱出までがあまりにも早いと思いました。
というか、脱出がラストかと思っていたくらいで。(^^;
あの施設の中の設定は好きだったのですが…後半あれほどのアクションななったことにも驚きです。
アクションシーン、確かに凄いのですが、やりすぎはやっぱりバランスが悪かったですね。

あくまでも商品扱いしていたメリック博士は怖かったですねぇ。

トラックバックさせていただきました。

投稿: 白くじら | 2007/01/14 00:08

こんばんは。

前半のような渋いSFでは、今は企画通らないんですかね。
後半アクションが派手になればなるほど、主人公が不死身になるのでスリルが薄れてしまうという、何ともいえない映画でした。

投稿: starless | 2007/01/15 20:12

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作品情報 タイトル:アイランド 制作:2005年・アメリカ 監督:マイケル・ベイ 出演:ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソン、ジャイモン・フンスー、スティーヴ・ブシェミ、ショーン・ビーン あらすじ:汚染された外界と隔絶され、殺菌・脱色されたようなモノトーンでクリーンなビル世界で暮らす人々。完全な管理下におかれた彼らは、男女が隔てられ、清潔な白のつなぎのコスチュームを着て、名前はコードネーム化されている。彼らの人生の目的は、抽選でアタリ、汚染除去された地上の楽園“アイランド”行きのキップを手に... [続きを読む]

受信: 2010/08/14 02:49

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