NANA
同名の人気コミックを映画化。
ナナ(中島美嘉)と奈々(宮崎あおい)。ロックバンドのヴォーカリストとして成功を夢見るナナと彼氏との幸せな生活を夢見る奈々。同じ年齢、同じ名前でありながら対称的な二人の東京での生活を本作は描いている。
ロックバンドを取り上げた映画ではあるが、本作はロックの映画ではない。ロッカーの生き様も、ロック魂も、そのようなものは描かれていない。本作で描かれているのはアマチュア・ロッカーの世界なのである。
プロと比べたアマチュアの特徴はその「不安定さ」にある。ライブハウスに出演したとしても出演料はごくごくわずか。たいていの場合は出演料をもらうどころか、逆にライブハウスから全チケットを買い取り、それを仲間内で売りさばくことで費用の穴埋めにすることになる。「売れる」バンドなんてほんの一部。大半はアルバイトをしながら活動費用を捻出することになる。
そんな経済的な「不安定さ」のほかに精神的な「不安定さ」もある。元の仲間達が就職して「かたぎ」になるのを横目に見つつ、明日をも知れぬバンド活動を続ける。「売れる」夢を見る自分と、将来の不安を感じる自分。夢と現実の狭間で漂うアマチュア・ロッカーの世界は、まさにモラトリアムそのものなのだ。
本作は宮崎あおいでもっているような映画だ。彼女の出ているシーンは生きているけれども、それ以外のシーンは死んでいるような印象だ。彼女が嫌いな人には見るのも苦痛な映画だろう。中島美嘉は見た目が原作のイメージにあっているのかもしれないが、ロック・ヴォーカリストを演じるにはその声量の無さが致命的。ライヴシーンの歌声などは聴くのが辛い。ミスキャストと言われても仕方がない。
ほとんどの出演者はパッとせず、ストーリー的にもありきたりで、一言でいえばいまいちの映画。なのに見るとなんだか懐かしくてついつい見てしまう。
それはまだ自分の中に、遠い昔のモラトリアムのかけらが残っているせいかもしれない。
#099
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