ミッション・インポッシブル3
トム・クルーズ主演のスパイ・アクション・シリーズ第3弾。
「イーサン・ハントの人間性に厚みを持たせること」
トム・クルーズ自ら製作に名を連ね、シリーズ中最も気合いが入るとともに難産であった本作のテーマはこれ。イーサンの私生活を描くことでキャラクターにリアリティーを持たせ、映画を荒唐無稽さを減じることを目指して作られたようです。
そしてそれは概ねうまくいっていたのではないでしょうか。冒頭の婚約パーティーの様子などをしっかり時間を取って描いていくことで、類型的かも知れませんが、自分の秘密を後ろめたく思いながらも妻を愛する夫と、秘密の存在を感じながらも夫を信じようとする妻の心の動きは伝わってきたような気がします。
しかし個人的な好みでいえば、この「厚み」が本作で唯一気に入らなかった部分となってしまいました。決して「厚み」の持たせ方が気に入らなかったわけではありません。夫婦の演技は悪くなかったと思いますし、観ていてしんみりさせられるシーンもありました。私が思ったのは「家族のために戦うスパイは観ていてつらい」という一点なのです。
ミッション・インポッシブルは「スパイ大作戦」です。純粋なスパイ同士のだましあいを楽しむ映画です。2作目以降はどんどん作戦に緻密さがなくなり、本作などは「侵入」というより「押し入り」に近い乱暴さですが、そんなことには目をつぶれます。しかし、上海のビルの屋上でスタンバイするイーサンの顔が、ミッションの困難さに対する緊張ではなく、妻の身を案じる恐怖でこわばるのを観るのはつらいんですよねぇ。
「荒唐無稽さ」を減じることを目標にした本作ですが、スパイ映画は荒唐無稽でいいじゃないですか。ミッションの成否に大切な人の命がかかっていなくてもいいじゃないですか。まぁ、このあたりは好みの問題なのですけれども、個人的にはちょっと重たかったですね。
でも映画自体はいい出来でしたよ。見せ場である橋の上での襲撃シーンなども、ハラハラを通り越してイーサンたちが心配になるくらいの緊張感でしたし(でも「荒唐無稽さ」を排したわりには攻撃機を自動小銃で撃墜するのはどうなのでしょう?)。また各地のロケシーンもよかったですね。特にバチカンの美しさは印象的で、壁を乗り越えて視界が開けたときの景色は見事でした。
数少ない、安心して楽しめる大作スパイアクションとして、今後も続いて欲しいシリーズですね。
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コメント
荒唐無稽でも「いいじゃないの」と許せる映画と
「おいおい」とツッコミたくなる映画がありますが、
この映画はまさしく前者。
「ツッコミなんてヤボ」
と言いたくなる
素敵な時間を過ごさせてもらえました。
投稿: えい | 2006/06/28 23:19
まさにその通りですね。
やはり映画には、ニュースでもドキュメンタリーでも見られないような「とんでもないもの」を見せて欲しいものです。
投稿: starless | 2006/06/29 22:00