SHINOBI
山田風太郎の「甲賀忍法帖」を映画化。
「人物が描けていない」「感情移入できない」「中途半端」などなどなど。
なんとも評判の悪い映画である。
決して悪くはないと思うのである。アクションシーンも健闘しているし、隠れ里の風景などもなかなかのもの。しかし前述の不満もよく分かる。そしてそれは「忍法帖」を映画化するにあたっての構造的な問題なのかも知れない。
「忍法帖」は大勢の特異な忍者たちが総当たり戦を行っていく構成を取ることが多い。忍者たちは通常の忍術の枠を超えた異常な技の持ち主たちであり、小説ではこの辺りが丹念に描かれる。そしておのおのの技の相性や、ちょっとしたきっかけが勝敗を分けることになる。
そしてこれらの説明的な部分を映画にいれるのはとても難しい。本作でも忍者は10人。上映時間を考えても、一人一人のキャラクターを設定していくだけの時間はない。おのずとよく分からない人たちがよく分からない技でいきなり戦い始めることになってしまう。また「忍法帖」の暴力描写や性描写をそのまま映画化すれば成人映画化してしまうのは必須。このキャストでそれはありえないので、おのずと押さえた表現になってしまう。これらが「中途半端」となってしまう主要な要因だろう。
人物が描けていなかったり感情移入できなかったりするのにも理由がある。それは「忍法帖」の忍者は一般的にいうところの「人」ではないからだ。「人であって人に非ず」「我らは武器だ」と劇中でも表現されるように、彼らの人生観、生死観は全く通常の人間とは異なっている。つまり観客にとってそもそも感情移入できるような対象ではないのだ。
そして「忍法帖」はそんな彼らの生き様を丹念に描くことにより、共感や感情移入はできないながらも彼らを頭で「理解」させる。そして彼らの「哀れさ」を感じさせるのだ。彼らを「理解」できるだけの描写に時間を割けなかったことが、本作への観客の不満の原因となっているのだろう。
そのエンターテインメント的な内容とは裏腹に、「忍法帖」の映画化はかなり困難なのだ。
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コメント
starlessたちが、難しい困難などいれるのは
ちゃん吉たちが、忍で悪くはない原因などを成人しなかったよ。
投稿: BlogPetのちゃん吉 | 2006/05/28 09:12