ローレライ
福井晴敏の小説「終戦のローレライ」を映画化。
第二次世界大戦末期、特殊兵器「ローレライ・システム」を搭載した潜水艦伊507号は、密命を帯びて出撃した。
原作小説はかなりの長編で、内容は特異な戦争物。正直映画化はうまくいかないだろうと思っていましたが、小説の映画化としてはびっくりするほどよい出来だといっていいでしょう。
各登場人物の過去のエピソードをばっさり切り捨ててローレライの作戦行動に内容を絞り、さらには重要キャラクターであるパウラの兄の存在さえも削除するなど、かなりの簡略化が計られており、決して原作に忠実というわけではない。なのに原作の面白さが失われていないのは見事といっていいでしょう。原作者自らが映画化に関与しているだけのことはあります。
舞台が潜水艦である故に艦内のシーンが大部分を占めるわけですが、ここを退屈させなかったのは男優陣のがんばりによるものでしょう。各人の描き込みが浅くなってしまった関係でステレオタイプ的なキャラ設定になってしまった感もありますが、艦長を話のメインに持ってくることで乗り切っています。
それに引き替えびっくりするほどひどい出来なのが特殊撮影でしょう。CG、ミニチュア、合成、どれをとっても自然な映像にはなっていません。ただこれは技術やセンスだけの問題じゃないんでしょうね。本作の製作費は12億円。日本映画では「巨額」と称されるほどの額ですが、ハリウッド映画だったら主演のギャラにも足りない額です。ハリウッド映画がプレイステーション2のゲームなら日本映画はゲームボーイのゲーム。映像的クオリティーを比較するのは酷な話なのかも知れません。
終盤のストーリー展開は、やや類型的な自己犠牲が多すぎる気もしますが、それを普通に受け入れてしまうのが「ヤマト世代」の宿命でしょうか。第二次大戦を舞台とした自己犠牲相次ぐストーリーは、「戦争美化」などと言われかねないものですが、1968年生まれの原作者にそのような意図が無いことはあきらかでしょう。「子供たちにツケを回しその責任を取れない大人たち」それが本作のテーマであり、それは何も戦争だけの話ではないのです。
巨額の国債残高や環境汚染など身の回りにはたくさんのツケがあります。戦後のそして現代の大人たちはツケの責任を取れているのでしょうか。
#081
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