ビッグ・フィッシュ
エドワード・ブルームが語る彼の人生の物語は、いつも周りの人々を楽しませてきた。しかし一人息子のウィルにとって、父の「法螺話」が不満の種。どこまでが「真実」でどこからが「虚構」か。見えてこない父の実像にいらだつ彼にとって、父との溝は深まるばかりだった。
そして、そんな父の最期の時が近づいてきた。
最近すっかり人気監督となったティム・バートンの映画を見るのは2本目。「バットマン」以来だから実に17年ぶりということになる。そんなバートン初心者の私が言うのもなんだが、本作でも彼の特徴的な「画風」の魅力は際だっているように思える。
とかく「リアル」であることが重視される映画の映像においてみれば、バートンの映像は「リアル」ではない。一目で「映画=作り物」であることが解る。そのかわり彼の映像は磨き抜かれている。無駄なものは省かれ、必要であれば細部まで作り込まれている。本作の大部分を占めているエドワードの昔話の奇妙さ・荒唐無稽さに、デフォルメされたリアルさをもつバートンのファンタジックな画風が見事にマッチして、とても感じのいいファンタジー映画に仕上がっている。
エドワードの語る物語はかなり現実離れしており、息子のウィルが疑うのも無理ない内容だ。観客もいつしか物語の「虚と実」を手探りで区分けしながら映画を見ていくことになる。それゆえに、そんな真偽を探る者たちをあざ笑い放り出すようなエンディングの効果が、ダイレクトに観客にも伝わってくる。
人生において「真実」は重要なのか。「真実」は人を幸せにできるのか。真実の探求と人生を楽しむこと、両者のバランスを取るのは意外と難しい。
また本作は父と子の物語でもある。親子という最も近い人間関係においても、お互いに解り合うことは困難を極る。理解に至るには多くの努力と長い時間が必要なようだ。エドワードとウィルはギリギリ間に合ったが、間に合わない場合も多いだろう。
考えねばならないこと努力しなければならないことは多く、人生はあまりに短い。「楽しむこと」を主眼にするとが、意外とさまざまな問題を解決してしまうのかも知れない。「楽しい人生だった」最期にそう思えるのは素晴らしいことなのだ。
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コメント
こんにちは。
父親の話すべてが”嘘、作り話”というわけではなくて、少し(かなり、かな?)大袈裟なだけだったというオチが素敵でした。
「ちょっと誇張してもいいじゃん、楽しければ。人生は楽しくなきゃ」
父親の生き方がバートン監督の映画作りと重なっていて、好きですね。
「シザーハンズ」「マーズ・アタック!」なんかが好きです。
最新作「チャーリーとチョコレート工場」はまだ観てないのです。(汗)
早く観なくちゃ。
投稿: つっきー | 2006/05/21 03:53
こんばんは、お元気ですか?
これを見て俄然バートンの映画を見たくなってきました。「バットマン」も見直したくなりましたし、「猿の惑星」も見てみたいですねぇ。
そんなに監督作もありませんので、ぼちぼちコレクションするとしますか。
投稿: starless | 2006/05/21 22:33
こんにちは。
最初はティム・バートンのものとは思わずに手にとってしまいました。(^^;
あまり爆発してなくって、思い出話にティム・バートンの世界が繰り広げられていて、最初はおおっと思ったのですが、やがて引き込まれていくのは、父親と息子の関係ですね。
親子だとある程度のギクシャクした関係は自然と修復されると錯覚しがちですが、実は意外と奥底に秘めているものはあったりします。(- -;
でもそういうとき、この作品を観ると緩和されそうな気がします。
トラックバックありがとうございました。
こちらからもさせていただきました。
投稿: 白くじら | 2006/12/31 16:57
こんにちは。
>自然と修復される
自然とそうなる場合も多いんでしょうね。
でもこの映画の場合もそうですが、問題は待てるだけの時間がない場合もあるということで、そのあたりがドラマを生むということですかねぇ。
投稿: starless | 2007/01/03 09:42