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2006/03/05

ナルニア国物語 第1章 ライオンと魔女

narnia1 C・S・ルイスの名作ファンタジー小説を、ディズニーが映画化。

疎開先のお屋敷にあった謎の衣装ダンスから、別の世界に迷い込んでしまった4人の兄弟。その地ナルニア国は、白い魔女の呪いにより100年の冬に閉ざされていた。

当然のことながら「ハリー・ポッター」シリーズや「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズと比較される運命にある本作。原作の再現度でいえば「ナルニア」の圧勝でしょう。「ハリー」や「ロード」が長大な原作を破綻寸前でまとめているのに対して、「ナルニア」は原作そのもののページ数が少ないこともあって、原作のエピソードを取りこぼすことなく、さらには新たなエピソードまで付け加える余裕を見せています。「ナルニア」が原作の面白さを一番ストレートに映画化できていると思います。

冒頭の空襲シーンは映画のオリジナル。うまくいったかどうかは分かりませんが、本作のキー・パーソンであるエドマンドのキャラクター描写を補強するために挿入されたものと思われます。またリアルな空襲シーンから汽車による移動、お屋敷、ナルニア国と、段階をおってスムーズにファンタジー世界に観客を移行させる意図もあったのかも知れません。

特殊撮影については、「ハリー」や「ロード」より明るいシーンが多かったため、若干厳しかったかも知れません。特に昼間の雪景色の場面は、光の扱い方の問題か、合成に違和感を感じる事がかなりありました。

個人的に難点を上げるとするならば、出演者たちが何となく地味だった事でしょうか。これは初めてポスターを見たときから思っていたことですが、映画を見ても印象は変わりませんでした。なにも美男美女を揃えろとはいいませんが、ファンタジー映画なのですからもうすこし華のある感じの人選にして欲しかったです。特に白い魔女に関しては、もっと「女王的雰囲気」が感じられる方が良かったと思うのですが。いつもあんな「魔女的雰囲気」の人だと、いくらお菓子くれるからって、ほいほいついて行かないのでは。いつもは「女王」、怒ると「魔女」って感じのほうが面白かったと思います。

クライマックスはお約束の戦闘シーン。原作よりも長めに時間を取って、たっぷり描かれています。ただしそこはディズニー。頭が飛んだり腕がもげたりはもとより、流血さえもほとんど描かれてはいません。このあたりが、「迫力がない。子供向けでつまらない」などと評される理由なのかも知れません。「お話が単純すぎる」などという声も多いようです。

お話については「単純=子供向けでつまらない」「複雑=大人向けで楽しい」とは一概にいえない部分もあるでしょう。あらゆる分野でシンプルな「定番」が楽しめないという理由はまったくありませんし、複雑さが楽しさにつながる保証はありません。「ハリー」や「ロード」を、原作を読まずに見た「大人」全員が、映画の内容を完全に理解できているのでしょうか。映画は本編で語るもの。原作を読んでいなければ理解出来ないとすれば映画としては問題です。

映画の特殊効果は、近年のコンピューターの進歩にともない、行き着くところまで来た感じがあります。この世に存在するあらゆるものと、この世に存在しないあらゆるもの。もはや映像化できないものはありません。確かに戦闘シーンに迫力は必要ですし、リアルな映像が刺激につながるのも間違いありません。しかし、過激な描写を見たくない人がいるのも事実です。

「ロード」は最終的にアカデミー賞まで受賞した素晴らしいシリーズです。しかし、「クリーチャーが気持ち悪い」「戦闘シーンが残酷」などの理由から敬遠されるようなことがあるとしたら、それは映画にとっても不幸なことです。

これまでの映画は「今まで描けなかったものを描く」ことに力を注いできました。しかしこれからは「描けるものの中から何を描くか」ということを考えていかないと、やがて行き詰まることになるでしょう。

ナルニア国物語 ライオンと魔女@映画生活

#071

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コメント

こんばんは。

TBありがとうございます。
こちらの書き込み、
とてもうなずけるお話でした。
映画への熱い想いが伝わり、
嬉しくなっりました。

投稿: えい | 2006/03/05 21:21

やっぱり比べちゃいますね。
映画としてどうかというと、やっぱりキャラが薄かったのが不満の主因かと思います。
原作は知らないので、もともとそういう話なのかもしれませんが…。

投稿: rukkia | 2006/03/05 22:38

>えいさん
コメントありがとうございます。
かなり真面目に映画化されている本作が、「子供向け」の一言で葬り去られるとしたら残念です。
ハリーだって1作目の頃は、さんざん「子供向け」と言われていたことですし、ナルニアにもがんばって欲しいですね。でも7作目までは無理でしょうか?

投稿: starless | 2006/03/06 20:08

>RUKKIAさん
コメントありがとうございます。
たしかにキャラは薄かったです。
でも原作のキャラも薄いのです。桃太郎や一寸法師のキャラが薄いのと同じです。おとぎ話であるがゆえの欠点とみました。
次回作では、なんとか対策をとって欲しいものです。

投稿: starless | 2006/03/06 20:12

こんばんは。

この時代にあって、どうしても「ロード…」と比べられるのは仕方がない作品でしたが、両者の読者層もずいぶん違うでしょうし、本来比べるべきではないのでしょうね(でもやっぱり脳裏をかすめてしまいますが)。

この作品はまるでディズニーがファンタジーの原点に返って作り上げた作品のように感じられました。
なんだか懐かしいような気持ちで観てしまいました。

トラックバックありがとうございました。

投稿: 白くじら | 2006/07/31 22:30

>白くじらさん

やっぱり見た目が似てますからね。比べられけなされながらも、まずまずのヒットだったようでとりあえず第2作は作られそうですね。

それにしても最近のディズニーは、これといいパイレーツ2といい、アニメや動物ものといったいわゆる昔の「ディズニーもの」の枠を越えた、上質な娯楽映画を作っているとは思いませんか。

投稿: starless | 2006/08/01 19:28

こんばんは。

そうですね。
最近では借りてから「あれ、これディズニーだ」と知る映画が多くってちょっとびっくり。
昔からSFは結構多いのですが、最近は特に力を入れているのかもしれませんね。

…それにしてもアニメの2はほとんどイマイチなのに「パイレーツ…」はやってくれました!

投稿: 白くじら | 2006/08/02 23:45

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