アザーズ
ニコール・キッドマン主演。
第2次世界大戦末期。広大な屋敷に二人の子供と暮らすグレースは、フランスに出征した夫の帰りを待ちわびていた。ところが、やがて子供たちが奇妙な事を言い始める。「お母さん、この家に誰かいるよ」
この映画は「ホラー」に分類されているようですが、「ホラー」というよりは「ゴースト・ストーリー」、幽霊譚といえるでしょう。
通常この手のお話は、「こちら」から「あちら」を見る話になるのが一般的。ところが本作は、「あちら」から「こちら」を見る話になっているところがとても個性的です。「あちら」での暮らしが「こちら」での暮らしと全く変わらないところが面白いわけですが、考えてみれば「あちら」にいる「アザーズ(the others)」はもともとは「こちら」に暮らしていたわけで、暮らしぶりが変わらないのは驚くにあたらないのかもしれません。
また「こちら」から「あちら」が見えないのと同様に、「あちら」から「こちら」も見えないという設定も斬新です。そうすることで見かけ上、「こちら」と「あちら」の違いがまったく無くなるわけです。このように、「あちら」と「こちら」を鏡の両面のように描くことで、観る者を幻惑しようとするのがこの映画というわけです。
最後のひっくり返し方もなかなかのもの。チャネリングって向こうからみるとあんな感じなんですね。「こちら」が「あちら」に怯えるように、「あちら」も「こちら」に怯えている。興味本位で心霊スポットに行ったりしてはいけないというのは、本当なのかも知れません。
残念だったのは、グレースの苦悩を物語の中でしっかりと描写出来なかったこと。「ゴースト・ストーリー」はゴーストの悲しみをしっかり描ければ、単なる怪談を超えた物語となれるのですが、本作はそこまでの感動はありませんでした。
ともあれ、とても美しい英国的な風景のなかで描かれる、怖くない幽霊のお話。「ホラー」の嫌いな人にぜひ観ていただきたいですね。お人形さんのように綺麗なキッドマンが、いかにも「あちら」の存在といった感じではまり役でした。
#073
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コメント
こんにちは。
逆転の発想というべき作品で、結構好きです。
恐怖の対象も、闇ではなく明るさこそが恐怖だったという演出もよかったです。
この関係を理解してもう一度観るのも新しい発見ができていいですが、この手のは最初の感動をもう二度と味わえないのが残念です。
ホント、興味本位で心霊スポットに行くのは怖いことですね。
※トラックバックさせていただきました。
投稿: ぽこ | 2006/03/14 21:10
オチだけをとってみると、二番煎じのようですが、「あちら」をメインにここまで描いた映画は無かったと思うのですが。なにかと比較されてかわいそうな映画です。
>心霊スポット
子供の頃、夜お墓に行ってススキが手に見えてからというもの、すっかり「現地」は苦手です。
心霊は映画で見るのが一番です。
投稿: starless | 2006/03/14 22:51
こんにちは この映画は最初見たときより
二度三度とあとになって、おもしろくなってきました。ニコール・キッドマンがやはり
古典的な香りのする映画の雰囲気に
あっていましたねー。
どうせならぎりぎりまで騙されたかったので
夫が帰ってくるときにやたら
霧がもわもわしてなかったらよかったのに
と、細かいところを気にしたりしている
私であります。
投稿: くるっぱー | 2006/03/18 15:25
>くるっぱーさん
「騙し」という点で考えると、この映画は騙そうという気持ちが少なかったような気がします。
かなり早いうちから、使用人たちの思わせぶりなせりふを入れたりして、登場人物の内に「この世の者でない者」がいることをほのめかしていました。
ただ「騙し」を核にしないわりには、それ以外の部分が弱かったため、どことなく中途半端な感じの出来になってしまったみたいです。
投稿: starless | 2006/03/19 09:25