007/ゴールドフィンガー
シリーズ第3作 1964年
【007】 ショーン・コネリー
【 敵 】 ゴールドフィンガー(実業家) オッドジョブ(ゴールドフィンガーの部下)
【主な舞台】 マイアミ~ジュネーブ~ケンタッキー
前作「ロシアより愛をこめて」のヒットを受け、大幅に予算アップして作られた第3作。舞台を初めてアメリカに移し、文字通りの「アメリカ上陸」を果たしました。本作は「007の最高傑作」とされることが多いのですが、それは今日につながる007シリーズの主要な要素が、本作で確立された点が大きいと思います。
スパイ活動の枠からはみ出した世界的規模の陰謀の提示から、敵地に単身乗り込み危機に身をさらすボンド。敵もなぜかボンドを生かしたまま、陰謀のクライマックスに立ち会わせ、最後にボンドが囲みを破って陰謀を粉砕。ラストでは変装した敵の親玉が再びボンドの命をねらい、撃退したボンドは救助隊等を無視してボンドガールとお楽しみ。007のストーリーの「雛形」とでもいえるものが本作で確立されたのです。
冒険を彩る様々な要素も登場しました。Qセクションで開発された新兵器と仕掛け満載のボンドカー。敵方にはミステリアスな美女。個性的な敵の親玉とその用心棒である怪人。印象的で重厚な主題歌。どれもこれから定番となるものばかりです。
またここまでの2作と比べると、シリアスさが後退した代わりに、ユーモアや「けれん味」といった要素が増しているのも特徴でしょう。ボンドのセリフの端々や敵の造形などにそれらは強く表れていると思います。
そんな本作ですが、改めて見てみると意外とのんびりした展開であることに気がつきます。冒頭のマイアミでのイカサマ事件からゴルフ対決と特にアクションらしいシーンもなく、スイスでの峠のカーチェイスも、どちらかというとスリルより景色の美しさのほうに目が行ってしまいます。工場でのカーチェイスではボンドカーの仕掛けが大活躍しますが、捕らえられてからは舞台はケンタッキーの牧場へ移り、最後のフォート・ノックスまでアクションはありません。
後のシリーズのアクション密度と比べると、かなり間延びした構成ではありますが、それを退屈させないのはボンドやゴールドフィンガーなど、登場キャラクターの魅力に負うところが大きいのでしょう。特に日本人としては、日系人レスラーのハロルド坂田演じるオッドジョブの素晴らしさに触れないわけにはいきません。40年のボンド映画の歴史の中で、彼が最も印象的な悪役の一人であることは疑いないでしょう。「殺人シルクハット」とその見事な最期は、子供の頃から強く印象に残っています。
本作以降シリーズは円熟し、そしてマンネリ化していくことになります。シリーズの歴史の中で、本作はその名にふさわしく一番輝ける存在なのかも知れません。
#066
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コメント
本作でパターンができてきたようですね。
本作はボンドカーもいいですが、やっぱシルクハット投げ子分が一番かと。
投稿: rukkia | 2006/02/18 16:27
>RUKKIAさん
コメントありがとうございます。
やはり「笑顔の怪人」ですね。
西洋人から見た東洋人の不気味さが表現されているのでしょうかねぇ。
投稿: starless | 2006/02/20 21:52
こんにちは。
私もこの作品から入ったせいもあってか、もっとも好きな作品になっています。
他の作品にはないのんびり感も確かにありますね。私も改めて観直していて牧場のシーン辺りから、こんなに何もなかったかな?と思ってしまいました。ただ、本当に牧場で寝ているわけでもなく、いろいろとしているので面白いんですけどね。(^^)
あのハロルド坂田の帽子攻撃は特異でよかったですねぇ。
後の娯楽大作になってしまったシリーズの原点ともいえる構成でしたね。
トラックバックありがとうございました。
こちらからもさせていただきました。
投稿: 白くじら | 2010/08/13 09:35
むかし観た映画って、イメージが残っていますよね。
この映画だと、金色の死体、アストンマーチン、ハロルド坂田
シリーズの象徴のような本作ですけれど、実は派手なアクションシーンって少なくて
きっと本作の頃はまだ「人気シリーズ」としての立場を確立しておらず、予算もこれ以降の方が多かったのでしょう
投稿: starless | 2010/08/13 14:09