マシニスト
クリスチャン・ベイルの激ヤセで話題のサスペンス映画。
機械工のトレバーは、重度の不眠症のため1年ほど前から眠れない日々が続いている。そんなある日、彼のまわりで奇妙なことが起こり始める。彼しか見た者がいない謎の人物アイバンの正体とは。
「フォーガットン」「フライトプラン」と続いて、最近こんな「異常か?陰謀か?」映画ばかり見ているような気がします。
本作もお約束通り、記憶の欠落を思わせるシーンを織り込みながら、主人公が混沌の中に落ち込んでゆきます。このあたりの展開は、トレバーの交際範囲が狭いことも功を奏して、世界が徐々に狂っていく様子がとてもよく表現されていたと思います。
本作で描かれる世界の「悪夢度」を高めている最大の功労者が主演のクリスチャン・ベイルであることは間違いないでしょう。かなりのシーンがベイルの一人芝居に近い状況なのですが、「激ヤセ」の役作りだけではなく、その演技も見事なものだったと思います。
本作の素晴らしいところは、主人公が「異常」だから幻覚を見たのではなく、「正常」だから幻覚を見たのだという、逆説的な結末を用意したことでしょう。そして主人公は3度目の、そして最後の選択において「光」を選択し、救われることになるのです。
「悪夢」から「救済」へ。決してハッピーエンドではありませんが、不気味な展開が続いた後だけに、「救済」のもつ意味を考えさせられます。そういう意味では、ずっと前に見た「ジェイコブズ・ラダー」と似ているかも知れません。
もう一つ重要な点は、本作がスペインで制作され、撮影も(舞台がLAでありながら)スペインで行われたということです。当初監督たちはアメリカでの制作を考えていたようですが、「話が不気味すぎる」などと出資者が集まらなかったようです。
道路標識や車のナンバープレートをバルセロナに持ち込んでの撮影は、大変な苦労があったようです。そんな苦労をしても自分の映画作りにこだわった監督と、本作に出演を決めたベイルに拍手を送りたいです。
それにしても、この映画を作れないアメリカとは・・・。「フォーガットン」や「フライトプラン」など問題にならないいい映画だと思うのですが。
#065
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