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2006/02/02

ライオンと魔女(ナルニア国物語1)/C.S.ルイス

lion まもなく日本でも公開される同名映画の原作。1950年作。

第二次世界大戦中のイギリス。空襲を避けてロンドンから郊外に疎開してきた4人兄弟は、疎開先のお屋敷で不思議な衣装ダンスをみつける。

全米でハリー・ポッターを蹴落として初登場興行成績第1位をかざり、現在までに3億ドルちかくを稼ぎ出している絶好調な映画版「ライオンと魔女」は、ハリー・ポッター同様いわゆる児童文学を原作としています。ただ近作ではもはや児童文学とはいえないほどのダーク・ファンタジーと化している「ハリー」と比べると、「ナルニア」はまさに児童文学。文体といい挿絵といい、ファンタジーというよりもおとぎ話といったほうがよいかもしれません。

「ナルニア国物語」は、その映像イメージから「指輪物語」を原作とした「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズと比較されていく運命にあるシリーズだと思うのですが、両作の原作が持つ雰囲気はかなり異なります。

「指輪物語」はその題名とは裏腹に、物語よりもその物語の舞台である「中つ国」を描くことに力点が置かれています。物語という骨格の上に、中つ国の歴史、文化、言語、地理、自然などが分厚く肉付けされており、しばし物語を見失ってしまうほどです。物語自体は面白いのですが、その周囲に巡らされている中つ国のディテイルがあまりに重く取っつきが悪いため、全9冊を読み通すにはかなりの根性が必要です。

一方の「ナルニア国物語」では、世界に関する説明は最小限にとどめ、物語を語ることのみに重点が置かれています。これなら子供が読んでも飽きることはないでしょう。さすが児童文学と思わせる部分です。本作「ライオンと魔女」でも、人の言葉を話す動物や世界を雪に閉ざす魔女など、不思議な存在がたくさん出てきますが、それらを説明するのではなく、そういったものとして自然に世界を描写していく力はみごとです。

物語は至ってシンプル、登場人物もけっして多くはありません。子供たちの挫折と成長、勇気と正義の大切さ、そんなおきまりのテーマが描かれています。でも「おきまり」だからといっておもしろくないわけではないのです。たとえ先が予測できても、予定調和であっても、安心して楽しめる「普遍的なおもしろさ」って存在するとは思いませんか。

いかにも「児童文学です」という感じの本なので、手に取るのは抵抗があるかも知れませんが、ぜひ映画鑑賞前にいかがでしょうか。ただ本屋さんによっては児童書のコーナーにあるのでなかなか見つからないんですよね。

早く続きを読みたいところですが(「ナルニア」は全7作なのです)、次に控えているのはロシアから現れたダーク・ファンタジー「ナイト・ウォッチ」なのです(これも映画化ですね)。

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