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2006/01/28

フォーガットン

for 飛行機事故で最愛の息子サムを失ったテリー。傷心の日々を送る彼女だったが、しだいに自分のまわりからサムが「存在」していた痕跡が消えつつあることに気がつく。サムの死が隠蔽されようとしているのか、それともテリー自身が・・・

自分の認識とまわりの認識が食い違う、というシチュエーションは映画や小説でよくお目にかかります。精神的に孤立した主人公を中心に物語を進めることで、サスペンスを高めていくことができます。

まもなく公開される「フライトプラン」もそんな一本ですが、同様のモチーフであり、以前から気にはなっていたものの何となく見逃していた本作を先に観ることとしました。

このタイプのストーリーは、最終的には2つのパターンに落ち着くと思います。

(1)主人公が異常
主人公の認識に異常があることによって食い違いが起きたとするものです。主人公の精神に問題があって幻覚を見ていた、主人公が多重人格者で別人格が騒ぎを起こしていた、などの例があると思います。全てが主人公の夢だった、いわゆる「夢オチ」などもこのタイプでしょう。
このタイプの利点としては、観客が感情移入して観ていた主人公の視点を否定することで、主人公と同様に観客にも大きなショックを与えることができることでしょうか。「どんでん返し」といわれる状況を作りやすいタイプです。
ただ最近はこのタイプがかなり多いような印象を受けます。観客も主人公に疑いを持ちながら観ているようで、疑われると見破られやすいのもこのタイプかも知れません。
(1)タイプであることに気がつかれないことが(1)タイプにとって重要なのです。

(2)周囲の陰謀
主人公以外の全員がグルになって、なんらかの陰謀を企てていたというもの。自分以外の町の住人がみんなエイリアンに乗っ取られていた、自分以外の村人は全て吸血鬼となってしまっていた、まわりはみんなCIAのエージェントで国家的な秘密を隠蔽しようとしていた、などなどいろいろなパターンがあると思います。
このタイプは、通常中盤あたりで陰謀が発覚し、後半は主人公の脱出または反撃といった展開になり、映画的にも盛り上がるものと思われます。
(2)タイプにとっては陰謀の正体自体が映画おもしろさに直結するわけではなく、その陰謀といかに渡り合っていくかが重要となるのです。

では本作はどうだったのでしょう。

序盤の展開は、駐車した車やコーヒーのエピソードなど「記憶の欠落」を暗示するようなシーンがあり、(1)タイプを予想させます。そのあとアルバムやビデオテープの内容が消えていきます。身の回りだけでなく新聞の記事や隣人の記憶などにも変化が起こり、(2)タイプだとすると相当大がかりな陰謀が想定されるため、(1)タイプ色濃厚となっていきます。

そもそも(2)タイプは、ある程度隔離された世界が舞台となることが多く、本作のような大都会を舞台にして(2)タイプを設定するのは、かなりの困難が伴います。

しかし国家安全保障局の登場から物語は急展開し、やがて本作は(2)タイプであることが判明します。

映画の評判が悪くなる理由の一つに「予想したジャンルと違った」というものがあると思います。ホラーだと思ったらサイコサスペンスだった。感動ヒューマンドラマだと思ったらコメディーだった。恋愛映画だと思ったらSFだった等々。主として宣伝にだまされるわけですが、ジャンルの好みは人それぞれだけに、この予想が裏切られたときにはかなりのマイナス印象となるのでしょう。

(2)タイプというのは、その陰謀の性質によってSFだったりホラーだったりポリティカル・サスペンスだったりと、かなりジャンルが異なります。そして(2)タイプの場合は、どんなジャンルの(2)タイプであるかあらかじめほのめかされていることが多いと思います。(2)タイプにとって、陰謀の正体が映画の核ではないのです。

公開後の本作の評判はあまり良いものではありませんでした。本作をSFだと思って見に行った人はかなり少ないでしょうから、しょうがないかも知れませんね。しかし「実験者」の目的を、単なる侵略行為ではなく「異文化への関心」としたのは、SF的で良かったと思います。異邦人の目から見た地球を描くことで、比較文化論的に人類の問題点を描くというのはSFの常套手段ですからね。本作も最終的には「人と人との絆の大切さ」をテーマにしたということになるのでしょう。

本作の欠点は、本来(2)タイプにとってクライマックスではない陰謀の暴露をクライマックスに据えてしまったことでしょう。陰謀からの脱出も陰謀への反撃も描かれないため、盛り上がりに欠けてしまったのです。「母と子の絆は出産より前からあるのよ」だけですからね。

あと予告編に「ぶっとび」入れるのはどうかとおもいます。あれ観たら、本作が(1)タイプでないと分かった時点で、陰謀の正体が分かってしまいますからね。あんなことできる奴はそういませんから。

フォーガットン@映画生活

#061

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コメント

starlessさん、こんにちは。
私はこの映画の、なにかあったら
みんながぴゅーーっと消える部分があまりにも
つぼに入ってしまって、冷静にこの映画を
分析できなかったので、とてもおもしろくこの
記事を拝見しました。

盛り上がりに欠けた、この一言に尽きるのかも
しれませんね、テーマと描き方がちぐはぐ
だったせいなんですね。

私もフライトプランどうなるのか、今とても
気になっています。

投稿: くるっぱー | 2006/01/29 06:36

>くるっぱーさん コメントありがとうございます。

せっかくだから最後はテリーも飛ばされて、「先」を描いても良かったと思うんですよね。で、「上司」と対面してまたピューと戻してもらうと。
やはり正体気になりますし。ひょっとして悪魔族かもしれないし、四次元人間かもしれないし。
「フライトプラン」どうなりますか。
親子が乗り合わせた飛行機がたまたま宇宙人の団体旅行だった、とかだったらどうしましょう?

投稿: starless | 2006/01/29 09:20

こんばんは。
「フライトプラン」のオチ、考えましたよ♪

 実は飛行機、飛んでませんから~

ちゃんちゃん♪

格納庫みたいなところに実は飛行機が入ってて、外の景色は映像。振動も適当に加えられてます。ジョディのお嬢ちゃんはジョディが薬を盛られて眠っている間に飛行機から連れ出されてて、ジョディが実は飛行機が飛んでないと気付いて、飛行機から脱出できればおっけーです。

まさか、当たりませんように~。(笑)
今週末にも観に行く予定です。
1月は6本、劇場に映画を観に行けました。(感想がたまりまくってます・・・)

投稿: つっきー | 2006/02/01 02:35

>つっきーさん
夜はちゃんと寝ましょうね(笑)。
「実は格納庫」というと、大昔に観た「カプリコン1」という映画を思い出します。
なんとなく「ジョディが変」はないような気がするので、「フライトプラン」は陰謀型だと思うのですが、そもそも動機が思い浮かびません。
ジョディが飛行機の設計者ということは、なにか構造上のトリックがあり、黒幕は航空会社となるのでしょうか?
それにしても6本とはよく見ましたね。
2月は「フライトプラン」と「ミュンヘン」は何とか観ておきたいですねぇ。

投稿: starless | 2006/02/01 23:46

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