ハリー・ポッターと炎のゴブレット
「ハリー・ポッター」シリーズ、第4作。
「三大魔法学校対抗試合」と、そのさなかに進行する陰謀を描く。
「ハリー・ポッター」シリーズと「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ。ほぼ同時期に始まった両シリーズは世界中で大成功を収め、「ロード・オブ・ザ・リング」に至っては完結編でアカデミー作品賞まで受賞することとなりました。
この両シリーズに共通することは、どちらも長大な「偉大なる原作」の映画化である点です。そして両シリーズともに、原作ファンのイメージを壊すことなく、なるべく原作に忠実に映画化することに努力している点も共通点としてあげられるでしょう。
極論すれば、両シリーズとも「原作をできる限り再現することをおもしろさの拠り所とした映画である」といえるでしょう。
「努力賞」というと残念賞的なイメージがありますが、「王の帰還」のアカデミー作品賞受賞は、「努力賞」が世界の頂点を制した瞬間だったような気がします。
「ハリー・ポッター」シリーズの原作は、巻をおうごとにページ数が増しており、「炎のゴブレット」では第1作である「賢者の石」の2倍は軽く超えています。増加する原作に忠実でありながら、映画の最大フォーマットであろう2時間30分~3時間の枠をはみ出すわけにもいかない。本作はシリーズの映画化にとっては大きな山場になることが予想されました。
そしてスタッフはそのような難局を、「三大魔法学校対抗試合」と「ヴォルデモートの復活」のみに焦点を絞り、その他のエピソードを一切切り捨てることで乗り切ることとしたようです。前3作では、原作に忠実であるがために、説明的であったり詰め込みすぎであったりした印象もありましたが、本作では内容を絞ることで映画の流れが格段によくなっており、結果として「映画としてみれば」シリーズ最高のできとなっていたのではないでしょうか。
原作の忠実な再現を望むファンとしては、端折りすぎで納得のいかない部分も多いかと思われますが、映画制作としてはこれしかなかったでしょうね。でも映画を見たあと小説を読む人にとっては、本作では小説の半分以上を新鮮な気持ちで楽しめるのではないでしょうか。前作までは、映画の「補完」として小説を読むような感じになってしまったでしょうから。
小説の読者がもつ「ハリー・ポッターの世界」のイメージは千差万別なわけですが、このシリーズは常に、万人のイメージの最大公約数的な映像化を果たしてきました。そしてさらに万人のイメージの少し上をいくような要素も加えられており、本作も素晴らしい映像の数々が楽しめます。とくにオープニングの「クィデッチ・ワールドカップ」は感動的でした。ワールドカップのエピソード自体がほとんど削除されていたため、少ししか見ることができなかったのがもったいなさすぎます。できれば1試合くらい見たかったです。
また本作での重要な要素が、思春期を迎えるハリーたちの「心の動き」なのですが、このあたりもキャストのがんばりでとてもよく描けていたと思います。小説を読むとよくわかるのですが、「ハリー・ポッター」はファンタジー小説であるとともに優れた学園小説なのです。現役の子供たちよりも、大人たちの方が往時を想い、楽しめるかもしれませんね。
本作を境に、「ハリー・ポッター」の世界は闇に覆われていきます。次の「不死鳥の騎士団」も大長編です。がんばって映画化をお願いします。
#053
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コメント
ちゃん吉はここにstarlessとここでシリーズへ試合したの?
投稿: BlogPetのちゃん吉 | 2005/12/04 15:22