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2005/11/18

回想のビュイック8/スティーヴン・キング

buick 突然の事故で警察官の父を失った少年ネッド。

彼は父の同僚であり親友であったサンディ分署長らの話を聴くうちに、生前の父が強い関心を持っていた「ビュイック」の存在を知った。

優れたストーリーテラーであるキングのこの小説は、文字通りサンディらの「昔語り」を中心に話が進む。キングの作品では、過去のエピソードに絡めて現在の大事件を描くものは多いが、本作では過去における「ビュイック」にまつわる怪異についての語りが大部分を占めており、現在の事件は最後の最後に一つ起こるきりである。また怪異の中心である「ビュイック」の正体についても、解明されることなく物語は終わる。

一見ホラー小説的でありながら、実は非ホラー小説である本作は、すでに映画化が決まっている。監督はあのジョージ・A・ロメロである。一体どんな映画にするつもりなのであろうか。キング原作のB級映画列伝に新たな1ページが加わりそうである。

そんな本作のテーマはなにか。本作の中心は「語り」である。サンディらが過去の出来事を少年に語る中で、若き者と老いた者、そして父と息子の対話が情感豊かに描かれているのである。

「全ての質問に答えが得られると思ってはいけない」

執拗に「ビュイック」の正体について解明を迫るネッドに対して、サンディはこう言い放った。

「自分がどこから来て、どこへ行くのかさえ分からないだろう?しかし、それでもその事実を抱えて生きていかなければならないんだ」

そう、「ビュイック」はシンボルなのである。サンディが言うように「ビュイックはどこにでもある」のだ。

この作品の執筆前後、キングは交通事故で生死の境をさまよったという。キングも「ビュイック」を見たわけである。

私が「ビュイック」に出会ったとき、その存在を受け入れて生きていくことができるだろうか?いや、もう見ているのかもしれない。

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コメント

若き者署長と、作品と、キング原作を存在しなかったの?


投稿: BlogPetのちゃん吉 | 2005/11/19 10:33

おお、キングの新刊ですか。
話を読む限りホラーっぽいのですが、どんな作品になるのでしょうか。楽しみです。
でも監督がジョージ・A・ロメロとなると描写自体が結構ホラーしそうです(笑)。たしか「ダーク・ハーフ」が同じコンビでしたね。あれも脳の手術や鳩たちの襲撃がちょっと怖かったところですが…。

「自分がどこから来て、どこへ行くのかさえ分からないだろう?しかし、それでもその事実を抱えて生きていかなければならないんだ」

という言い回しは、以前観た「ファイナル・ディスティネーション」と似通っているのではと思ってしまいました。
人生決断の積み重ね、信号を渡る時ですら渡るか渡るまいか決断を迫られ、その結果どうなるのかは神のみぞ知る…。

「ビュイック」はシンボルというのは予兆みたいなものなのでしょうか。
となると小さなシンボルというものは、もうすでにいくつか見ているのかも知れません。

※ところで「8」という数字はいったいどこからきているのでしょうか。

投稿: ぽこ | 2005/11/19 17:42

>ぽこさん
コメントありがとうございます。

「ダークハーフ」は本では読んでいますが、映画は見ていません。あれもロメロっぽくはない作品ですねぇ。もっとロメロっぽい原作もあると思うんですが。
今回も「手術」はありますよ。っていうか「解剖」ですな。

「ビュイック」は人生における「理不尽なこと」のシンボルだと思われます。理由も何もなく、人にはただ受け入れるしかないことが、人生にはなんと多いことでしょう。つまり「解明するな、受け入れろ」というキングからのメッセージなのでしょう。神を恨んではいけないよ、と。

本作の「ビュイック」の8気筒エンジンには、「ビュイック8」という文字が刻まれていたそうです。

投稿: starless | 2005/11/19 18:20

むむ…解剖シーンがあるのですか。これはなんとも、怖くなりそうですね。ってストーリーに関係ないところで怖くてもなんだか…になりそうですが。

なるほど「理不尽なこと」のシンボルということですか。
前回の私のコメントはかなりずれたことを言っていますね。失礼しました。
理不尽なことを受け入れられないことは非常に多いですね。私も先日ちょっと嫌なことがあって、上の命令なので受け入れなければなりませんが、なかなか理由なしには受け入れられません。
「解明せずに受け入れろ」…は私にとってなかなか実行が難しそうです。
理由付けがなければストレスが溜まりそう(汗)。なんだかこれ以上書くと愚痴みたいになりそうです(笑)。

※ビュィックって車でしたか。(>_<) どうにも車には疎くて。ちょうど「クリスティーン」というキングものを観てしまいました。

投稿: ぽこ | 2005/11/19 18:46

>ぽこさん
解剖は解剖でも、この世のものではないものの解剖なので、本では一番気味が悪いシーンでした。

「理不尽なこと」でも、拒絶したり逃げ出したりできるものもたくさんありますが、なかには逃れられないものもあります。その場合には理由づけを考えるよりも、ただ受け入れてしまう方が心の安らぎが得られる、というのがキングの考えのようです。

「クリスティーン」懐かしいですね、映画は見ていませんけれども(笑)。
一度キングの映画を徹底的に見てみようかな、でも膨大な数がありそう。

投稿: starless | 2005/11/20 12:55

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