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2005/10/29

バタフライ・エフェクト

butter バタフライ・エフェクト=ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起こる(カオス理論)

幼い頃から、一時的に意識がとぎれる記憶障害に悩まされてきたエヴァン。やがて彼は自分の持つ奇妙な「力」に気づき、それを使ってある人を助けようとする。

通常過去へ戻る場合は、その時何が起こったかを知っているのが一般的。しかしエヴァンの場合は、以前記憶がとぎれた時点に戻るために、戻る本人が戻った先で何が起こるのかを知らない点が面白い。つまり、エヴァンが過去をやり直す過程で、エヴァンの過去の謎が解き明かされていくのです。

また過去に滞在できるのも記憶がとぎれていた間だけなので、過去が書き換えられたあとは強制的に現在に戻され、エヴァンは新しい現在に放り込まれるのです。過去の謎解きと、現在の変化。これが交互に繰り返されることで、映画はテンポよく進みます。

エヴァンは過去の重要なポイントに戻って、現在に悪影響を及ぼしたと思われる出来事に変化を及ぼすことで、現在の問題を取り除こうとします。タイムトラベルでは禁じ手である「過去の改変」を意図的におこなったのです。そして、ここで問題となるのが表題にもある「バタフライ・エフェクト」です。問題を取り除くためにおこなったある行動が、思いも寄らない形で現在に影響を及ぼすのです。そしてエヴァンは、「バタフライ・エフェクト」をうち消すために更なる過去の改変をおこないそれがまた「バタフライ・エフェクト」を起こす、という悪循環に陥るのです。

最後にエヴァンがとった行動は「バタフライ・エフェクトを封じるために蝶を殺す」ことでした。結局いくら過去にもどって選択しなおす力を持っていても、無限のバリエーションを持つ「バタフライ・エフェクト」を予知し制御することはできなかったのです。たとえそれが現在における愛する人との離別につながることであっても、「羽ばたき」を封じることで現在に及ぼされるあらゆる「効果」を取り除くしかなかったのです。

人生において未来を見通したり過去をやり直したりしたい、という願望は誰もが持つもの。誰もが完璧な人生を望むからです。しかし人生は、自身と周りの他の人間が引き起こす膨大な数の「バタフライ・エフェクト」の影響を受けています。見通した未来が実現される保証もなければ、やり直した過去がどのような影響を及ぼすのかもわかりません。まさに人生は「カオス」そのものなのです。

自身の「羽ばたき」が及ぼす影響や、他者の「羽ばたき」から受ける影響に怯えながら、混沌の中で生きていくのは恐ろしいことです。でも人は生きていかなければなりません。映画の中で「力」に頼ることなく生きていくことを選んだエヴァンのように、「バタフライ・エフェクト」を恐れずに生きるしかないのです。そしてそんなつらい人生だからこそ、偶然出会う幸せが素晴らしいものとなるのでしょう。「バタフライ・エフェクト」は人生に悲しみをもたらすとともに、喜びをももたらすのです。

本作のDVDには、劇場版とエンディングが異なるディレクターズ・カット版が収録されています。劇場版が「リセット」だとすれば、ディレクターズ・カット版は「逃避」。その後味は大いに異なります。

個人的には、「カオス」への対処の仕方が「逃避」では辛すぎます。「羽ばたき」を封じたあと、二度と「力」を使うことなく「カオス」の中に身を投じた劇場版の方が、人生の切なさを表現していてベストだと思います。

ラストでエヴァンは、偶然雑踏の中ですれ違ったケイリーに声をかけることなく歩み去ります。「カオス」が与えてくれた幸運に対して、自分が「リセット」した事実と整合を取るために背を向けたのです。

彼女との離別は、「神の力」を濫用した彼に与えられた罰だったのでしょう。

#051

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コメント

TBありがとうございます。
こちらからもさせていただきました。

すごくうまく書かれてあるレビューで
感心しました。
勉強になりました。

劇場版とディレクターズ・カット版を
見比べたのですね。
私も観たいと思ってます。
とてもせつないという想いをひしひしと
感じる映画でした。

投稿: ユカリーヌ(月影の舞) | 2005/10/31 17:41

>ユカリーヌさん
コメントありがとうございます。
ディレクターズ・カット版は、だいぶ趣が違い、ある意味「SF色」を強く感じました。
映画全編から感じられる「切なさ」がエンディングでピークを迎えるという点で、劇場版の方が気に入っています。
その他に劇場版の別エンディングが2つDVDには収録されていますが、これはただのバリエーション的なものです。
ディレクターズ・カット版では、エンディングの違いにともなって、新しく張られている伏線などもあり、監督の「こっちがベストだ」という意気込みが感じられます。
わたくし的には、ディレクターズ・カット版を最初に見ていたら、あれほどは感動しなかったでしょうね。

投稿: starless | 2005/11/01 20:45

はじめまして、こんばんは。
トラックバックありがとうございました。

綿密に練られた脚本と、アッと驚くような展開にグイグイ引き込まれました。

この映画を観て、私の中でのアシュトン・カッチャーの印象もガラリと変わりましたね~。

セルDVDをゲットして、早く真のエンディングが観たいです。

投稿: | 2005/11/29 20:31

何度もすいません・・・。
名前を書くのを忘れてしまいました(笑)

投稿: マイコ | 2005/11/29 20:32

>マイコさん
はじめまして、コメントありがとうございます。

>真のエンディング

どっちが「真」かは判りませんよ(笑)。
ただ一つ言えるのは、「劇場版」→「DC版」の順で見ることですね。

逆に見た場合、人によっては「ぶちこわし」になるかもしれません。

>アシュトン・カッチャーの印象

わたしはたぶん本作で初めて見た人だと思うのですが、この人デミ・ムーアと結婚したんですってね、勇気あるなぁ。

投稿: starless | 2005/11/29 21:13

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