レッド・オクトーバーを追え!
トム・クランシーの処女作である同名大ベストセラー小説を、ジョン・マクティアナン監督が映画化。
ソ連の最新鋭潜水艦レッド・オクトーバー。特殊な推進装置を持つレッド・オクトーバーは、敵艦隊に察知されることなく敵国の沿岸まで侵入することができる能力を持っていた。そして処女航海に出たレッド・オクトーバーは、突然姿を消した...
本作の主人公は、CIAの情報分析官(厳密には本事件のときはCIA入り前だと思いましたが)ジャック・ライアン。演じるのはアレックス・ボールドウィンです。「ジャック・ライアン・シリーズ」の次回作「パトリオット・ゲームス」以降は、かのハリソン・フォードがライアンを演じることとなりますので、ボールドウィンのライアンは最初で最後ということになりました。
ハリソン・フォードのライアンも悪くはないのですが、小説の設定を考えるとちょっとハリソンでは歳を取りすぎでしょうか。本作のボールドウィンの方が若き無鉄砲なライアンに上手くマッチしていたような気がします。
本作で、ライアン以上に重要な役柄といえるのが、レッド・オクトーバー艦長のラミウスです。演じるのはショーン・コネリー。永年に渡ってソ連と戦い続けてきた彼が、ソ連将校を演じる日が来るとは思いませんでしたが、その風格ある佇まいはさすがです。彼の起用は大成功だったと思います。
後のライアン・シリーズと比較すれば短いとはいえ、原作がかなりの長さであるため、どうしても物語を進めるのに手一杯といった感もありますが、まぁ原作に忠実に丁寧に映画化したといえるでしょう。
しかし原作でかなりのページが割かれており、またハイライトでもある終盤の潜水艦戦が十分に描かれていなかったのが残念です。もともと潜水艦戦は、当事者同士も相手が見えない状態で戦っていますので、映像で表現される映画にとっては意外と苦手なジャンルなのかもしれません。各潜水艦艦長同士の読み合い、だまし合いの心理戦をきっちり描写できる小説の方が面白いのは仕方がないのかもしれません。
でも、もうすこしがんばってほしかったなぁ。あれじゃソ連の潜水艦かわいそうですよ、まぬけすぎて。本当はもうちょっと死闘だったんです。
本作が大ベストセラーとなったジャック・ライアン・シリーズは、このあとも続々と刊行されるのですが、ジャック・ライアンの出世にともない(最後にはアメリカ大統領までいきます)段々と物語のスケールが大きくなり、映画化が難しくなってきてしまったのは残念です。
第二次世界大戦を舞台にした潜水艦映画と比べると、原子力潜水艦の中は広くて清潔。閉所恐怖症的なものは、もはやあまり感じられませんね。深く潜行したせいで船体が軋んだりリペット飛んだりもしませんし。ソナーも今はパッシブソナー(音を聴き取る)が中心で、昔のアクティブソナーで「ピーン」と追い立てられる恐怖もありません。
昔の潜水艦映画見ると「潜水艦に乗るのはやだなぁ」としみじみ思いましたが、今の原子力潜水艦って意外と快適そう。
でも、死ぬときは一気に死ぬのは前と一緒ですね。
#049
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コメント
こんにちは。
この映画はショーン・コネリーのキャスティングが良かったという点で同感です。
当時、原作を知らなかった私はてっきり単発ものの小説で主人公はラミウスだと信じていました。(苦笑)
個人的には副官のサム・ニールも気に入っています。最後に死んでしまう場面ではじわーっとしました。
潜水艦ものの映画はどれも好きですが、乗りたいと思ったことは一度もないですね。
最近では米海軍が一般人を乗せてクルーズするPR活動を行っていたりしますが、私は絶対乗りません。(笑)
ちなみに私の潜水艦もののイチオシは「Uボート」です。
あの狭さと臭さ(マジで臭そう)、緊迫感は凄すぎです。
投稿: つっきー | 2005/10/08 17:36
つっきーさん、コメントありがとうございます。
> 副官のサム・ニール
さすがサム・ニール好きのつっきーさんですね。ボンドとダミアンが乗り組んでいるすごい潜水艦でした。2人で艦を降りて戦えば無敵ですな。
> 「Uボート」
これは当時映画館で見ていますよ。たしかお正月第2弾ロードショーでした。その時のお正月第1弾ロードショーでスタローンの「勝利への脱出」を見に行ったとき、初めて見た70ミリスクリーンに感銘を受け、同じ映画館の次回上映作である「Uボート」を見に行ったのです。
リペットが飛ぶのが怖かったですねえ。音楽も良かった記憶があります。
その後、監督のウォルフガング・ペーターゼン監督を意識してフォローしていなかったのですが、調べてみると立派なメジャー監督になったのですね。あの地味な「Uボート」からよくぞ「トロイ」までいったものです。
「Uボート」以降は「アウトブレイク」しか見ていませんが、「アウトブレイク」は初めてTHXシアターでみた映画として印象に残っています。
「トロイ」のDVDも買ってあるので、こんど見てみましょう。
投稿: starless | 2005/10/08 23:05
ぷぷっ、ボンドとダミアン・・・。(爆)
潜水艦なんか使わなくても、亡命はおろか、世界征服も夢ではありませんね。(なのに、憧れはアメリカで釣り・・・)
サム・ニールのダミアンを劇場まで観に行った頃が懐かしい・・・。あの頃はかっこよかったですよ、マジで。<サム・ニール
>「Uボート」
あれ、リペットって言うんですか。素直にネジだと思ってました。ネジなわけないですね。(笑)
ぴゅーんと飛んでくるリペットに当たったら、痛そうですよね。痛そうっていうか、死ぬかな。
ペーターゼン監督についてちょこっと記事にしてありますので、お暇なときでものぞいていただけると嬉しいです。(すでに読んでおいでだったら、ごめんなさい)
http://same-moon.tea-nifty.com/essay/2005/02/post_12.html
>「勝利への脱出」
単純に面白かったですね~。
スタローンは人情もののアクションに向いていると勝手に思っていますから~。(笑)
コメディ路線からは足を洗ってください、とも思っていますが。(爆)
投稿: つっきー | 2005/10/09 11:33
> あれ、リペットって言うんですか。
ぎく。そういえば、何で私は子どもの頃から「リペット」だと思っていたのでしょう?
ネジやボルトかもしれませんよねぇ。だいたいリペットだったら船内側には飛ばないような気がしてきました。
ちょっと調べてみても、Uボートが何でとめてあるのかわかりませんでした。
リペットじゃなかったらどうしましょう。
> ちょこっと記事
「Uボート」もお父さん関連でしょうか。
『「Uボート」をかなり早い時期に観ており、ゆえにウォルフガング・ペーターゼン監督のファンでした』って、この自信に満ちあふれた「ゆえに」が強烈ですね。愛情を感じます。
投稿: starless | 2005/10/09 23:34