アレキサンダー
オリヴァー・ストーン監督が、200億円を費やして製作した超大作。アレキサンダー大王の生涯を描く。
「グラディエーター」から始まり、「トロイ」「キングダム・オブ・ヘブン」と最近ブーム(?)となっている歴史超大作ものの中でも、すこぶる評判の悪いこの「アレキサンダー」。その評判の悪さの秘密は?
以前「キングダム・オブ・ヘブン」を見たときに感じたことは、「一流の監督がしっかりお金を使って映画を作るのならば、ストーリーの善し悪しはともかく、映像的には素晴らしいものができあがるのでは」ということ。そこで、失敗作の誉れ高い「アレキサンダー」もDVDを購入して、あえてチャレンジすることとしました。
たしかに面白くない映画でした。ストーリーもちゃんと理解できるのですが、今一つ盛り上がりません。これは単純に脚本に無理があるのでしょうね。3時間近い映画ですが、それでもアレキサンダーの30数年の生涯を描ききるには時間が足りません。どうしてもエピソードをぶつ切りで並べるような感じになってしまいます。その合間をナレーションで補っているのでストーリーが追えなくなるわけではないのですが、そのナレーションがよけいぶつ切り感を強調しているようです。年末にやっているNHK大河ドラマの総集編を見ているような感じに近いでしょうか。
では、200億円をかけた映像の方はどうでしょうか。モロッコやタイで行われたロケと、そこに建造された巨大なオープン・セット。大勢のエキストラ。当時を忠実に再現したのであろう衣装や室内装飾。たしかに豪華です。が、なんか華が無いというかなんというか、引きつけられるものがないのです。
事実をありのままに映像化するのはドキュメンタリーです。フィクションとしての映画の強みは、事実とは異なる映像を観客に見せることができることです。本作の映像は当時を再現したものであるかもしれませんが、映画としてのダイナミズムや観客を引きつける仕掛けに欠けていたのかもしれません。結果として単に豪華なだけの映像となってしまったような印象です。
「たくさんのお金と、大勢のスタッフを使って一流監督が撮ったのに、何でこんな事になってしまったんだろう」 これが「アレキサンダー」を見た感想でしょうか。
DVDの特典映像には、おきまりの製作ドキュメンタリーが収録されています。そこでのオリヴァー・ストーン監督の様子が興味深いです。
大勢の出演者・スタッフを引き連れて辺境の地への大規模なロケを敢行。過酷な自然環境の中で、自分の納得がいくまで撮影を繰り返す。苛立つキャストやスタッフ。彼らを叱咤激励しながら撮影を続ける監督。その撮影は、監督の夢であるアレキサンダーの生涯の映画化を実現するため、ただひたすらに続けられていく。
この監督の姿、どこかで見たことがあるような気がしませんか?そうです、本作で描かれているアレキサンダーの姿そのものではありませんか。
アレキサンダーの夢と野望をかけた壮大な遠征とその挫折を描いた本作は、オリヴァー・ストーン監督の夢と野望をかけた壮大な遠征とその挫折を描くこととなってしまったのです。
夢であったアレキサンダーの映画化を成し遂げ、自らアレキサンダーとなった監督は本望でしょうが、それに付き合わされた周りの人たちは気の毒ですね。もっとも、一番気の毒なのは出資者の人でしょうけれども。
#045
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コメント
こんにちは。
アレキサンダー=オリバー・ストーン!!
深くうなづいてしまいました。
なるほど、なるほど~~です。
私はそれなりに無駄遣いロケやCGも
楽しみましたが、どうして見る側がこんなに
頑張っていいところを探してあげなきゃいけないのだろうか、と、多少疑問に思ったりもした
「アレキサンダー」でした。
投稿: くるっぱー | 2005/12/12 23:14
>くるっぱーさん
コメントありがとうございます。
同じ無駄遣いするなら、どかんと派手にやってほしかったですね。
オリバー・ストーンに次回作の話がくるのか楽しみです。
投稿: starless | 2005/12/13 21:00