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2005/08/17

ロッキー

rocky シルベスタ・スタローン主演。彼の大出世作となったボクシング映画。脚本もスタローンが手がけている。

場末のリングで戦うボクサーのロッキー。ファイトマネーだけではその日の暮らしにも事欠き、高利貸しの取り立て屋をしてなんとか食いつなぐ毎日。そんな彼の楽しみといえば、飼っているカメの世話と、ほのかな恋心をいだく、ペットショップ店員のエイドリアンに会うことくらいである。

ある日、タイトルマッチの対戦相手が負傷してしまったため、急遽代役を捜すこととなったチャンピオンのアポロは、地元フィラデルフィアの無名のボクサーにチャンスを与えることとした。それがロッキーだった。

この映画はボクシング映画ですが、ボクシングの試合のシーンはとても少ないのです。場末のリングでの試合を描いた冒頭の数分と、アポロとの試合を描いた最後の15分程度。合わせてもせいぜい20分程度のもの。映画の大部分は、それ以外のロッキーの日常生活の描写に割かれています。

その日常生活も、別に大きな事件もなく、ロッキーとエイドリアンの不器用な恋愛を中心に淡々と進んでいきます。この映画をひとことでいってしまうと「ありきたり」となるでしょうか。よく成功物語を称して「アメリカン・ドリーム」などといいますが、本作は正に典型的な「アメリカン・ドリーム」が描かれています。

そんな「ありきたり」な本作ですが、映画から伝わってくる強烈な「パワー」はいったい何なのでしょう。本作で描かれる「ダメボクサー、ロッキー」は当時の「ダメ俳優、スタローン」をそのまま投影したものでしょう。「アメリカン・ドリーム」というと「成功」をイメージしますが、ロッキーが望んでいたのは成功ではありませんでした。自分がクズではなく、自分の存在に意味があることを確認するため、そのためだけにリングにあがったのです。同様に、映画「ロッキー」は「ダメ俳優、スタローン」の自己確認のために作られた映画だったのでしょう。映画から伝わってくるのは、スタローンの気迫なのかもしれません。

しかし、気迫を込めただけでいい映画が作れるなら苦労はありません。この映画の「パワー」、映画のストーリーをすでに知っているのに見るとなぜか涙が出てきてしまう、映画から伝わってくるこの「パワー」はそれだけでは説明がつきません。

ロッキーは15ラウンドを戦い抜き、「アメリカン・ドリーム」を実現しましたが、それはスタローンが実世界で成し遂げた「アメリカン・ドリーム」の大きさとは比較になりません。この映画はアカデミー賞の作品賞、監督賞を受賞しました。その後のスタローンの活躍は皆さんもよくご存じでしょう。DVDに収録されているインタビューの中で、スタローンはこの映画を「奇跡」だと表現しています。共演者との出会いや撮影中の偶然の出来事など、あらゆる要素がプラスに働き、映画の完成度を高めたと話しています。

ロッキーは映画の中で奇跡を起こし、スタローンは映画の外で奇跡を起こした。映画から伝わってくる「パワー」の正体は奇跡の力、「ロッキー」はスタローン本人をもってしても二度と創ることのできない「奇跡の映画」なのですね。

#042

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コメント

後にも先にもスタローンがオスカーに絡むことができたのはこの作品だけではなかったでしょうか?
「ロッキー」シリーズは全部で5作(であってましたっけ?)ありますが、多くの人がこの1作目を支持しますよね。
この映画の良さは「ロッキーが勝てなかった」ことだと私は思っています。
「勝つことはできなかったけど、チャンピオン相手に15ラウンド戦い抜くことができた」という完璧なハッピーエンドではなく、「誰もが努力すれば到達できる域」というリアリティを残したことが成功の要因だったのだと思うんです。

この後のシリーズではロッキーは常勝です。(最初は負けたり、挫折したりするけど)
常勝のヒーローにはリアリティを感じません。

とはいえ、私は4作目の「炎の友情」が一番好きだったりするんですけどね。(苦笑)

投稿: つっきー | 2005/08/18 22:48

さすがは「シリーズものの覇者」つっきーさん、ロッキーも制覇のようですね。私は「3」までだったと思います。
ちょっと調べてみると、スタローンがアカデミー賞にノミネートされたのはこの映画が最初で最後のようです(当然受賞も)。
このあと確かにスタローンは大スターとなり、監督も手がけるようになります。でもその活躍は、シュワルツェネッガー、ドルフ・ラングレンとともに「三ばか兄弟」と並び称されるような「筋肉俳優」としてのものであり、「傑作」と呼べるレベルの作品は決して多くありません。
映画製作者とての才能は凡庸であるスタローンが、一生に一度だけ映画の神様の力を借りて歴史に残る作品を作ってしまったのが、本作なのでしょうか。同じレベルのものは本人にももう作れないでしょう。
このように自分の実力を超えた作品を作り上げてしまうと、多くの場合はそのあと自分の作品の重圧でダメになってしまうことが多いように思います。その点スタローンは上手くその遺産を利用して、映画界に地位を築いたといえるのではないでしょうか。

投稿: starless | 2005/08/19 21:23

こそこそ…

私が知っている自然消滅しそうなシリーズものの中に…ロッキー6というものが(笑)。
ほかにもダイハード4、インディジョーンズ4などもありますが、みなさんもうお歳なのに大丈夫なのかな。

…かさこそ…(と逃げていく)。

投稿: ぽこ | 2005/08/19 22:02

そろーりそろーり・・・

「ロッキー6」ですか。
5ではとうとうストリート・ファイトまで堕ちてしまったのに、今度はどこで戦うのでしょう?(すでに対戦相手の問題ではない)
「ダイ・ハード4」は順調に進行中ですね。
「インディ・ジョーンズ4」は頓挫しそうですね。ってゆーか、頓挫してくれ~。
でもこの前、「6デイズ/7ナイツ」観たのですが、まだまだイケそうな感じだったな~。
自分の年齢をヒロインに当てさせる自虐ネタがなんとも哀れでしたが・・・。(涙)

・・・かさかさ・・・(と草むらに隠れてstarlessさんを見ている)

投稿: つっきー | 2005/08/19 23:37

ひゅー……

声はすれども、姿は見えず。
夏らしく、こわい話のコーナーのようになってきました。
「ロッキー6」について調べてみたら、2002年末のニュースで「マッドマックス4」についての話がありました。
「ミラー監督、メルギブ主演。ハリウッドで製作。製作費125億円。メルギブのギャラ30億円。2003年5月からオーストラリアで撮影開始。2004年公開」
……どこへいってしまったのでしょうか。見たかったなー

皆さんお待ちかねの続編と言えば2006年6月6日公開予定の「オーメン666」。
どんなとんでもない話になるのか楽しみにしていたのですが、なんと第1作のリメイクだそうです。
……あの名作を冒涜しようなどと目論む輩は、地獄の炎に焼かれる事となるでしょう。

…ごろごろごろ(と雷鳴とともに去っていく)

投稿: starless | 2005/08/20 12:30

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