オーバードライヴ
突然バンドを解雇されたロック・ギタリストの弦。泥酔したあげく、伝説の三味線弾き五十嵐の運転するタクシーで下北半島に拉致され、五十嵐の弟子になることを強要される。
はじめは拒む弦だが、五十嵐の孫娘晶に一目惚れ。弟子入りして「三味線アルティメット大会」の優勝を目指す。そして弦の前に立ちふさがるのは、悪魔に魂を売り渡すかわりに「邪音」を操る技を身につけた謎の男であった。そして、壮絶な三味線バトルが始まる。
日本の映画はあまり見る方ではないですが、この映画はずっと前から気になっていました。「三味線バトル」でタイトルは「オーバードライヴ」ですよ、なんとなく楽しそうではないですか。
「オーバードライヴ」とは、ここでは「過負荷」のことで、エレキギターをアンプで鳴らすときに、音量を上げすぎて歪んだ音になった状態を指します。ロックでエレキギターが使われるときは、ほとんどの場合この「オーバードライヴ」がかかった状態で演奏されます。ただし実際にアンプをオーバードライヴさせることはまれで、人工的にオーバードライヴ時の音を作り出す装置を使うのが一般的です。
タイトルからの連想で、てっきり「三味線をロック的に弾き倒す映画」なのかと思いきや、意外に敵も味方も通常の三味線奏法で戦います。実はこの映画、主役の弦以外の三味線弾きはほとんどが本物の三味線弾きの方々なのです(なんと敵役の「悪の三味線弾き」も!)。そのあたりがオーソドックスな三味線奏法にこだわった理由なのかもしれません。
で、その三味線なのですが「三味線といえば、大勢がユニゾンでベンベン弾くもの」という私の印象を大きく変えるものでした。バチのタッチを変えることで繊細に音色をコントロールしながら、緩急をつけたフレーズを繰り出す様子は、ソロ楽器としての魅力を十分に伝えるもので、特にフラメンコギターを思わせるような早弾きは、非常にエモーショナルでかっこいいものでした。
当初期待していたような「ロック的な三味線」ではありませんでしたが、映画に参加した本職の三味線弾きの皆さんが期待されたように、三味線の魅力を十分に伝える映画に仕上がっていたと思います。
あらすじを見ていただくとわかるように、この映画はコメディーです。それもかなり突飛な演出が織り込まれているので(正直、意味不明な部分もあります)、見る人を選ぶ映画かもしれません。でも、見た後なんとなく三味線を弾いてみたくなるのは、いい映画だった証拠なのでしょうね。
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