ドーン・オブ・ザ・デッド
ジョージ・A・ロメロ監督が1978年に製作したホラー映画「ゾンビ」を、CM界の若手監督ザック・スナイダーがリメイク(監督本人は「新解釈」と言っているようだが)。
25年以上の時を超えてリメイクされた「ゾンビ映画」の傑作。果たしてその出来は?
まず驚かされるのはそのスピード。冒頭部分の展開が早いだけでなく、ゾンビの動きも早い。ゾンビといえば、特有のゆっくりした動きが恐怖を誘うのだが、本作のゾンビは早い。普通の人間より早く、追いかけてくるときは常に全力疾走。車で逃げても全力疾走で追いかけてくる。おかしいやら怖いやら。感染開始から主人公が街を脱出するまでの冒頭部分は、まさにスピーディーな新時代のゾンビを感じさせる出来だと思います。
ところが、かの有名な「ショッピングセンター」のパートになると雲行きが怪しくなります。どうもおもしろくない。オリジナルでは、じわじわとゾンビ化する世界から連絡が途絶え、ゾンビに包囲されたショッピングセンターが孤立していく絶望感、無力感が感じられたものですが、本作では冒頭部分がスピーディーだった分だけ、映画に急ブレーキがかかったように感じました。ゾンビに包囲されている恐怖感、周りの世界がゾンビ化してゆく絶望感、いずれもあまり感じられず、時間を割いて描かれた仲間内のいざこざもあまりおもしろいものではありませんでした。
とにかく「おいつめられ感」が感じられませんでしたね。最後には車両で脱出することになるのですが、なにも脱出しなくても当分ショッピングセンターで暮らしていけそうな感じでしたし。冒頭部分とドラマ仕立てのエンドタイトルはなかなか良かったのですが。CM出身だけにスピーディーな演出は得意なのでしょうね。
近年の撮影技術の進歩は、SF映画やアクション映画には大きな恩恵をもたらしていると思います。実際には存在しない世界や生物を登場させたり、スタントマンを危険にさらさずに大がかりなシーンを撮影したり。では、恐怖映画ではどうでしょう。本作でも「気持ち悪い感」の向上には撮影技術が貢献した部分はあると思いますが、オリジナル版より「恐怖感」は低下しているのではないでしょうか。より気持ち悪いものを見せればより恐怖を感じる、と単純にはいかないところが恐怖映画の難しいところなのかもしれません。
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コメント
速いですよね~。<ゾンビの皆さん
あのスピードで追いかけられたら、私などすぐゾンビの仲間入りです。(笑)
私はショッピングセンターに立てこもった人たちの多さに閉口しました。
あれじゃあ、一人一人のキャラクターの描き込みもできないし、感情移入もしにくいし、すっかり冷めきって観てしまいましたね。
とはいえ、starlessさんがお書きになっている通り、冒頭のつかみは良かったと思います。
starlessさんはこのDVDをお持ちですか?
もしお持ちなら、オーディオ・コメンタリーを聴きながら観ると面白いですよ。
さらに怖さが半減します。(汗)
「攻殻」へのコメントが後回しになってしまって申し訳ないです。
私自身、こだわりがありますので、時間をかけてじっくりコメントを書かせていただきますね。
あとですね、ぽこさんからもまわっておいでのようですが、私からも「見たい映画をつなぐタスキ」をお渡しさせていただきました。
お時間があるときにでもぜひ。もちろん、スルーなさっても問題ありませんので。
投稿: つっきー | 2005/07/14 08:33
つっきーさん、TB&コメントありがとうございます。
私が思う「ゾンビ」の怖さとは、一対一だと余裕で逃げられるし武器があれば倒すこともできるのに、逃げても逃げても倒しても倒してもじわじわとマイペースで迫ってくるところ何ですよね。そのへんが本作では味わえませんでした。
> 「攻殻」へのコメント
あまりお気になさらずに。
> じっくりコメントを書かせていただきますね
お、おてやわらかにお願いします。
投稿: starless | 2005/07/14 10:46
トラックバックありがとうございました。
こちらからもさせていただきました。
全力疾走型ゾンビは今までにない怖さを出すことはできたようですが、正式版(?)ゾンビと違ってなんだか墓場から出てくるようなものはいなかったような。
なので新鮮そのもので走り回れたのでしょうか。
確かに前作に比べてマーケットはかなり広くなんでもあるような感じでしたね。不良どもにめちゃくちゃにされるわけでもなく、あのまま立て篭もるのも手でしたね。うんうん。
それにしてもなんとも未来のない作品で、ちょっと落ち込みそうになる作品でした。
投稿: ぽこ | 2005/07/14 19:39
>ぽこさん
コメントありがとうございます。
ゾンビは幽霊とはちがって、一応科学的な原因がある現象ですから、お祓いしたり呪いを解いたりすることで、一気に解消することはできません。局地的な被害でとどめない限りはそのまま世界の終末につながるという意味では、どうしても未来のない作品になりますね。
本作のゾンビはウィルスによる感染のようでしたから、ひょっとしたらワクチン散布で一気に解決、とできるかも。でもゾンビ病直ったら元ゾンビはそのまま死体に逆戻りですね。
投稿: starless | 2005/07/14 20:45
確かにそうですね。
でも今回はラストでも襲い掛かられていたので、その対策すら練れない状態で、みもふたもないなぁ…と思いながら観ていました。
前作はとりあえずは「なんとかなるさ」で終わっていましたから。しかし…なんて能天気なとも思えるセリフですが、それだからこそ人間はしぶといのかも(笑)。
はっ、そうですね、治っても死んだ状態に戻ると…ばったりです。
投稿: ぽこ | 2005/07/14 21:24
お二人のコメントが面白かったので、少し割り込みを・・・。
せっかく生きていたのに、ゾンビに噛まれてゾンビになってしまった人が、ワクチン散布でゾンビ状態から解消されたと思っていたら・・・死人になってしまうのって可哀想ですね。
私は『バタリアン』的解決策が好きですね。
核爆弾のピンポイント攻撃でゾンビも生存者も一気に爆殺。(笑)
もっとも後から黒い雨が降って、わらわらと・・・と、より最悪の結果が待っていそうな気もしますが・・・。(汗)
投稿: つっきー | 2005/07/15 19:31
> 核爆弾のピンポイント攻撃
このあたりが現実的(?)な解決方法ですかねぇ。黒い雨が心配ならナパーム弾がよろしいですね。ウィルス系は熱に弱いですから。
投稿: starless | 2005/07/15 21:41