ボーン・アイデンティティー
マット・デイモン主演、ロバート・ラドラム原作のスパイ小説の映画化。
銃撃され、意識不明で漁船に救出された男。彼は一切の記憶を失っており、自分の名前さえも思い出せない。所持品を手がかりにたどり着いた銀行の貸金庫からは、様々な名義のパスポートと大金、そして銃器が見つかる。そして、謎の組織が彼を追い始める。
マット・デイモンは、記憶を失った元CIAの暗殺者ジェイソン・ボーン、という役どころ。暗殺に失敗した後、銃撃され記憶を失い、CIAが暗殺計画の発覚をおそれて彼を狙う、というのが本作のお話。
ボーンはあらゆる記憶を失っているが、スパイ活動に必要な技能(射撃、格闘、運転、侵入など)や知識は身につけたままであり、危機に陥ると本人の意思に関わらずさまざまなスパイ技能が発揮される、というのが面白い。頭は混乱しているのに動きや判断は冷静、つまり自分の中にもう一人の自分がいるようなものなのです。そしてボーンはその「もう一人の自分」の正体を探ることになります。
記憶を失ったボーンは基本的に「善人」であり、スパイである本来のボーンは暗殺者ですから基本的に「悪人」です。「善人」ボーンは、記憶を取り戻したいのですが、自分が「悪人」であることを知るのはイヤだ、という葛藤もあり、このあたりも見所となるのでしょう。
アクション映画初挑戦といわれるマット・デイモンですが、前述したように記憶を失った「善人」の役なので、彼のキャスティングは悪くないと思います。真面目そうな顔と、危機に陥った際、身体が勝手に「暗殺者モード」で動いたときのギャップがあって良かったと思います。当初この役はブラット・ピットが演じる予定もあったそうですが、彼だといかにも「悪そう」なので、マットで正解でしょうね。
そんなマット・デイモンのスパイっぷりを一言で表すと「真面目なスパイ」となるでしょうか。まぁ意識の表層が「善人」だからかもしれませんが、戦うときも真面目、カーチェイスも真面目、ついでに女性にも真面目。このアクのなさが物足りないような気もしますが、たまにはこういうスパイ映画があってもいいでしょう。
そんな本作の最大の難点は、ボーンが記憶を失うきっかけとなった「暗殺失敗」のくだりでしょうか。次回作以降で深く描く予定なのか、または時間がなくてはしょられてしまったのかわかりませんが、あの描写で納得できるお客さんは少ないでしょうね。アメリカ政府が3000万ドルかけて育て上げた暗殺者が、あの程度の状況で失敗するなんて。
それにしても、やっぱりスパイ映画の舞台はヨーロッパに限りますね。美しい町並みや自然を見るのもスパイ映画の楽しみの一つではありませんか?
#026
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コメント
面白かったですか?(←ストレートすぎる質問)
私は未見なんです。もちろん、続編の『ボーン・スプレマシー』も観てません。
理由は簡単で、なぜか、マット・デイモンが苦手なんです。ジョン・トラボルタも苦手だったりします。
なんで苦手なのかはわかりませんが、生理的に受け付けないんです。(トラボルタは割れたアゴがダメなんです。でもユアン・マクレガーは好きなんです。勝手ですね)
『グッド・ウィル・ハンティング』や『プライベート・ライアン』のように主役でない、もしくは共演が好きな俳優なら、観られるんですが、マットが主演の映画だと引いてしまいます。
これは映画ファンとして損をしているかもしれないと思い、あえて質問してみました。
007シリーズはほとんど観ました。
ヨーロッパやナイアガラ、アマゾンといろんなところを移動するので、ちょっとした観光気分に浸れますよね。
『ムーンレイカー』は本当に観光映画でした。(笑)宇宙まで行くし。(爆)
事後承諾で申し訳ありませんが、私のブログにリンクをはらせてもらいました。
紹介文ともどもチェックしていただき、問題があれば、おっしゃっていただけるとありがたいです。
これからもよろしくお願いいたします。
投稿: つっきー | 2005/07/10 21:15
トラックバックありがとうございました。
これはアクション映画として観るとなかなか楽しめる作品になっていたのですが、記憶喪失ものとしては、珍しく戻りそうになる予兆がほとんどありません。と思ってたらどうやら3部作みたいなかんじのようですね。2作目でどこまで物語が進んだのかは未観なのでなんとも…です。
私も究極の暗殺者にしてはあっけなく失敗というのが腑に落ちません。子供に関して何か過去があるのでしょうかねぇ。
今日の教訓:「大事なモノはお尻に隠しましょう!」
投稿: ぽこ | 2005/07/10 23:31
> つっきーさん
> 面白かったですか?
いきなり核心をついてきますねぇ(汗)。
デイモン嫌いの人が、それをうち消してまで楽しめるかというと、ちょっと疑問があります。
なにしろデイモンいっぱい出てきますし、他の登場人物は全体的に影薄いですから。
「スタイリッシュな映像」とほめる人もいますが、裏をかえせば淡泊ではあります。
「007」がとんこつラーメンならこれはそうめんでしょうか。物足りないといえば物足りない。
ただ「スパイ映画」っぽさはあるので、「スパイ映画」ファンなら、場合によっては寛大な気持ちで楽しんでいただけると思います。
> 映画ファンとして損をしているかもしれない
映画は結局嗜好品ですからねぇ。
わたしも勉強だと思って、たまには専門ではないジャンルの映画を見ることもありますが、「生理的に受け付けない」ものまで見なくてもいいかもしれませんよ。決して「名作」でないのは明かですし。
> リンク
いつも勉強させていただいているのはこちらの方ですよ。2か月ほどまえにBlogを初めて以来、いつもつっきーさんのところを参考にさせていただいております。
こちらこそ、よろしくお願いします。
投稿: starless | 2005/07/10 23:51
> ぽこさん
> 子供に関して何か過去があるのでしょうかねぇ。
本作でCIAが大騒ぎしているのは、暗殺が失敗したからではなく、ボーンを暗殺者として運用する作戦が失敗したからです。
ていうことは、ボーンの過去には大きな秘密があるはずなのです。
よく「超能力もの」の映画では、政府が超能力を持った子どもたちを世間から隔絶した施設に集めて、超能力開発&兵士としての訓練を行うといった話がありますが、ボーンも特殊な育て方をされたのかもしれません。
「頭痛がする」などというのも、なにかの伏線なのかもしれません。
と、こんなところで憶測してないで、次の「スプレマシー」見ればいいんですけどね(笑)。
投稿: starless | 2005/07/11 19:54
おくればせながら、わたくしもやっと見ました。この映画。よかったです。ほんとはあんまり期待してなかったので・・・。
続編も早速借りようと思います。
わたしもブログに記事書きましたので
トラバさせて下さい。よろしくお願いします。
投稿: sodifficult | 2005/08/06 11:31