スター・ウォーズ アナキンの謎
ここではアナキンにまつわる2つの謎について考えてみる。ひとつはアナキンの父親について、もうひとつは「選ばれし者」についてである。
1) アナキンの父親の正体は?
エピソード1と2において、アナキンの父親については明言されていなかった。エピソード3においてその正体は明かされたのであろうか。
「1」において、クワイ=ガン・ジンがシミ(アナキンの母)にアナキンの父について尋ねるシーンがある。そこでのシミの答えは次のようなものだった。
There was no father. I carried him. I gave birth. I raised him. Ican't explain what happened.
シミは「父親はいない。説明できないがいつの間にか身ごもっていた」というのである。いわゆる「処女懐胎」である。
スター・ウォーズの世界には「ミディ・クロリアン」というものがある。これはあらゆる生命の細胞のなかに存在している微小生物で、フォースを司るものとされている。血液中に含まれるミディ・クロリアンの数が多いほど、強いフォースの持ち主ということになる。
同じく「1」のなかで、ジェダイ評議会のメンバーに対してクワイ=ガン・ジンがアナキンについてこう話している。
It is possible he was conceived by midi-chlorians.
ここで解ることは、「ミディ・クロリアンにより人が作られる」という概念があることである。
そして「3」。劇場(?)においてパルパティーンがアナキンに対して、伝説のシスの暗黒卿ダース・プレイガスの話をする場面がある。非常に強いフォースをもったプレイガスは暗黒面の奥義を究めており、フォースの力でミディ・クロリアンから生命を生み出すことができたというのである(このプレイガスは弟子に全ての知識を伝授した後、その弟子に暗殺されたと説明される。この「弟子」がパルパティーン本人であるかについては彼は言及しなかった)。
どれも直接アナキンの父親について説明しているものではないが、これらの状況証拠からつぎのような結論に至るのではないだろうか。
「アナキンは、シスの暗黒卿ダース・プレイガス(またはその弟子、場合によってはパルパティーン)が暗黒面の力を使ってミディ・クロリアンから生み出した生命体である」
2) アナキンは「選ばれし者」だったのか?
「選ばれし者だと思っていたのに!」 オビ・ワンのこの悲痛な叫びが印象的なエピソード3。「選ばれし者(chosen one)」という言葉が初めて登場するのは「1」である。クワイ=ガン・ジンがアナキンについて評議会で報告した際に、アナキンが「フォースにバランスをもたらす者(who bring balance to the Force)」と予言されている「選ばれし者」ではないか、と話題になっている。
では、「フォースにバランスをもたらす」とはどういうことであろうか?
これを「ジェダイがシスを駆逐し、世界に平和をもたらす」と解釈した場合、「選ばれし者」はエピソード6において最終的に皇帝を倒したアナキンということになるのであろうか。
しかし、フォースを二分する勢力のうち、片方がもう片方を滅ぼすことが「バランスをもたらす」ことになるのであろうか?「3」でパルパティーンが語っているように、ジェダイとシスは究極的には何も違いはない。フォースの裏と表、両者でフォースを構成しているのである。
このことを踏まえ、「フォースのバランスをもたらす」とは「フォースの両面(光と闇)が融合することである」として、「選ばれし者」について考えてみたい。
「3」の終盤、双子を出産すると同時にパドメは息を引き取る。パドメはなぜ死んでしまったのか。医師によれば「生きる力を失っているようだ」とのことであった。パドメの死とほぼ同時期、ダース・ベイダーが復活する。その時にはものすごい憎悪により、フォースに大きな揺らぎが生じたはずである。
パドメはこの「フォースの揺らぎ」に感応して、死んでしまったとは考えられないだろうか。「フォースの揺らぎ」が強いフォースの持ち主の心身に影響を与えるシーンはシリーズでも描かれてきた。心身共に衰弱しているパドメが、ダース・ベイダーの発する巨大なフォースの揺らぎに感応したのであれば、命を失うことになってもおかしくないであろう。パドメは「フォースの揺らぎ」に感応できる、フォースの持ち主だったのである。
一方アナキンが、1)で考察したように「シスの暗黒卿が暗黒面の力により生み出した存在」であるならば、彼は生まれながらにして(暗黒面に墜ちるまでもなく)シスの血筋であるといえる。
そしてダークサイドを父に、ライトサイド(便宜こう呼ばせていただきます)を母に持ったルーク(とレイア)こそが、フォースの両面(光と闇)を融合させる存在「選ばれし者」なのではないだろうか。
「6」において、ルークは武力に頼ることなくベイダーの善なる心をダークサイドより呼び戻しジェダイとシスの抗争に終止符を打った。シスを滅ぼすのではなく、両者を融合させてフォースにバランスをもたらしたのである。
これがわたしの仮説である。
『「選ばれし者」とは、アナキンではない。フォースの光と闇双方の血を引き、両者を融合させる者、ルーク・スカイウォーカーである』
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コメント
こんにちわTBありがとうございました。
アナキンの父親ですが、パンフでも書いてありました、「ミディ・クロリアン」がダーク・サイドの生み出したものというようなことが。
ですから、アナキンはダーク・サイドの子孫だっということのようですね。
「選ばれ者」
やっぱり、何かで読みましたが、 フォースのバランスをつかさどる者=選ばれし者
この、アナキンの生まれた頃は、ジェダイも数が増えたし、パルパティーンも強大な力を持つようになって、どちらもパワーが膨張しすぎ、危うい状態。 そこで、いちど、この膨れ上がった状態をリセットすることが必要だった。それには、どちらからも、甚大な被害が発生するのは避けられない事。
それで、思うのは、アナキンによるテンプル(ジェダイ聖堂)での大虐殺 + エピソード6でのシスへのトドメ(ルークとともに)
だから、私はダース・ベイダーが「選ばれし者」だと、納得しておりました!
けれど、パドメがライト・サイドのフォースの持ち主っという説は また 納得いくものですね。
ルークも「選ばれし者」という説もありだと思います。 素晴らしい説ですでね。
投稿: がちゃのダンジョン | 2005/06/30 14:48
拙文ごらんいただきまして、ありがとうございます。
しかしパンフレットにそんな重大なことが書いてあるのですね!
「リセット」という考え方は興味深いです。
その線で考えてみると、エピソード6終了時に生き残ったのはジェダイ・シス両陣営でルーク一人だけ(レイアを除けば)。そして自然死のヨーダを除けば、ルーク以外のジェダイ・シス両陣営はみんなアナキンに殺されたようなものですものね。
つまり「リセット」したのはアナキン。その結果ジェダイもシスもなくなってフォースを受け継ぐのはルーク一人になる。
この説の方がしっくりきますね。
しかしフォースの意思はなんとも残酷なバランスの取り方をするものですね。一人になるまで皆殺しにしなくても。
投稿: starless | 2005/06/30 15:07
TB&コメントありがとうございます。
アナキンの父親ですが、一説ではドゥークー卿だとも言われています(^^)
投稿: まこ | 2005/07/01 23:50
> まこさん
ベイダー・ルーク親子同様に、ドゥークー・アナキンもお互いに手を切り飛ばしあっていることが、親子であることを暗示しているともいわれていますね。
たしかにドゥークーは、最期こそあっけないものの、かなりのフォースの持ち主のようです。手から光線が出るのは皇帝以外では彼だけですし。
投稿: starless | 2005/07/02 09:27
TBとコメントありがとうございました。
なかなか知的な考察で興味深く拝読しました。
映画誌でルーカス監督はアナキンを半神だと言ってました。生物学的父は存在せず、神話に出てくる人と神(フォース)の混血児だとか。
EP3ではシスの思念で生まれたようにも聞こえましたよね(パンフには記載はなかったように思いますが)。だから闇から生まれた存在(シスの思念が父)かなと思ったんですが、神話でいうイカロスやオリオンみたいに、神の血をつぐ才能があって傲慢なため人の領分を超えて破滅するという話だとするなら、EP1のクワイガンの類推通り、フォースの申し子で良いのかなって。正邪どちらにでもなりうる可能性を持ったフォースと人間の合いの子で、宇宙に安定をもたらすために発現した存在だと言うことかなと私は思いました。
よって多くのジェダイが感じた通り、アナキンが予言の「選ばれし者」でいいんだと思います。
EP3を見た後の、あくまで個人的意見ですが、アナキンの人間としての甘さはともかく、彼の意思と関係ない細胞個々の果たすフォースの子の使命は、厳格過ぎて闇と分離しすぎたジェダイ側を粛正し、一旦闇を増大させてジェダイの再生再構築を待ってから、一発逆転でシスを退け、光と闇の調和をもたらしたのかなとか思いました(笑)。
>パドメの死
なかなか理系的解釈ですね~。
私がアナキンの妻なら、当たり前生きていけませんよ~自分と赤ん坊の命のために、夫が悪に染まり罪なき人を大虐殺しちゃったら、そりゃあ胎児には罪がないから出産しますが、その後事の重大さに気力なくて自死します;;夫を愛していればこそ、あれじゃあ死にたくなりますよ~。
でも、パドメにフォースが強いってのは、ヨーダが確かEP1で指摘してましたね。
投稿: ふざけおに | 2005/07/04 00:50
ふざけおにさん、ご覧いただきましてありがとうございます。
> 生物学的父は存在せず、神話に出てくる人と神(フォース)の混血児だとか。
ほぉ、監督はこんなことも言っているのですね。
となると、父はいないとして、母はやはりシミですかね。
ミディ・クロリアンからダークサイドの力で生命を生み出すにしても、人間にするにはベースになる人間の細胞がいるのではないかと考え、実は皇帝の細胞が使われているのでは、と思ったことがあります。シミは代理母で。
なぜかというと、ラストでアナキンを助けに来た皇帝が本気で心配しているように見えたんですよね。あのシーンでなぜか皇帝のアナキンへの愛情を感じてしまいました。
しかし、ふざけおにさんに改めて言われてみると、「理系的」というかなんというか、「夢がない」解釈が多いですね、わたし。
投稿: starless | 2005/07/04 20:20
皇帝は思念でアナキンを生んだ可能性はあるかもしれないとは思います。
でも、アナキンの弟子としての有能な力が欲しかったのであって、かつジェダイから彼を奪うことで復讐したかったんだと思いますが、、、、あれを父性愛という「愛」とは言えない、愛する息子ならあんな残酷なことできないですよ;;
アナキンとパドメ、ルークとアナキンを対比すれば、皇帝は愛とは言えない利己的な他者利用ですよね。
SWの魅力は理系の人間に文系感覚を、文系の人間に理系感買を教えてくれることかもしれないですね(^^)
色々勉強になります。
投稿: ふざけおに | 2005/07/10 23:57
> 皇帝は愛とは言えない利己的な他者利用ですよね。
なんとも厳しいお言葉(笑)。
やはり皇帝は完全な「悪」ですかねぇ。
たしかに復活したベイダーが、パドメの死を知って怒りを爆発させているのを見てほくそ笑んでましたしねぇ、怖い人です。
でも、こうして6作全部見てみると、皇帝の桁外れな「ダーク」さが印象に残ります。
初めて「4」を見たときはベイダーもそうとう悪いヤツだと思いましたが。
投稿: starless | 2005/07/11 20:06
かなり、アナキン・スカイウォーカーがかっこいいと思います。
あーあパドメ役の人いいなー
だってファーストキスしてるんだもん。
わたしがパドメ役だったらな・・・
投稿: さいこー | 2005/07/31 15:38
TBありがとうございました。
そうか、ミディ・クロリアン懐妊だったんですね。
…誰かの落し胤かと期待してました(^^;
パドメの死はやっぱ納得いかないです。
あんなに強かった彼女が生きる意思を捨ててしまうなんて…。
フォースにやられたっていうほうが納得いくかも、と思いました。
投稿: rukkia | 2005/12/11 17:00
>RUKKIAさん
コメントありがとうございます。
話としてはパドメは死ぬしかなかったのでしょうが、うまく話の流れに乗せられませんでしたね。まぁ最後は力業の連続でしたから・・・
投稿: starless | 2005/12/13 21:04