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2005/05/14

I'm sorry,mama/桐野夏生

mama 桐野夏生の本を読むようになったのはどうしてだろう。

最初に読んだのは「OUT」だったか「ミロ・シリーズ」だったか。

「OUT」は普通の推理小説だと思って読んだんですよ(立派な推理小説ですが)。そうしたら推理小説的な部分よりも、登場する主婦たちの決して幸せではないけれど、でも一般的な家庭と比べてそんなに不幸せでもない日常の描写と、その生活の中でのちょっとした歯車の狂いからすこしずつ主婦たちが壊れていく様子に興味を引かれたのです。

自分は壊れてはいないけれど、じゃあ壊れてしまった人と何が違うのかというと、境遇や性格が根本的に違っているわけではない。今は壊れていない自分でも、ちょっとしたボタンの掛け違いで壊れてしまうかもしれない。憎悪や妬み、劣等感や不満。日常生活で抱えるいろいろな感情が、人を浸食していってしまう様を読むのがおもしろかったのです。

桐野夏生の作品は、最近の作品になるほど、だんだん「壊れた人」の占める割合が増えてきているような気がします。「ダーク」ではミロまで壊れてしまいました。

本作では、登場人物のほとんどがどこか壊れています。ふつう小説は登場人物(特に主人公)に感情移入しながら読むのが一般的だと思うのですが、本作では感情移入できるようなキャラクターはでてきません。主人公にいたっては、その行動は理解不能です。読者はまるで傍観者のように、おこる出来事をながめるしかないのです。

そんな主人公が、最後に一瞬だけ人らしい(読者にも理解できる)気持ちになるのですが、ここまで一切感情移入してこなかったはずの主人公なのに、なぜか泣けるんですよね。悪行三昧の「怪物」の心の中にも、人の心は残っている。逆に私たちの心の中にも、目覚めていない「怪物」がいるんでしょうね。

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